宮城谷昌光(みやぎたに まさみつ)の
『奇貨居くべし』を読みました。
中国の戦国時代、秦の丞相(宰相)だった
呂不韋(りょ ふい、?〜紀元前235年)を主人公にした小説です。
ん、呂不韋って誰? 呂不韋は
『キングダム』(原泰久、2006年〜)にも登場します。その存在感は圧倒的で、物語のキーパーソンでした。
『キングダム』では呂不韋が悪役で、秦王・政(後の始皇帝)が主人公の善玉ですが、
『奇貨居くべし』では呂不韋が主人公なので善玉です。逆に秦王・政は従来の小説・ドラマと同様に、「苛烈・残忍」という悪役で描かれています。
本作は呂不韋の少年時代からスタートするので、『キングダム』ではすでに故人で名前しか出てこなかった白起、藺相如などが重要人物として登場します。その他、若い頃の蒙驁、麃公、廉頗、春申君なども登場。全5巻と長いのですが、『キングダム』の前日譚としてワクワクしながら読めるでしょう。ただ、『キングダム』屈指の人気キャラである王騎は登場しません。
●商人から人臣の最高位である丞相まで上り詰めた呂不韋がなんといってもスゴイのは、
身分的には最下層に近い「商人」から秦という大国の丞相にまで昇り詰めたことです。本来であればあり得ない、不可能なこと。なぜ、それができたのか。それこそがこの物語の根幹とも言えます。
彼は一世一代の大博打を打つんですね。
「奇貨居くべし」(きかおくべし:
これは珍しい品物だ。これを買って置くべきだ)と。一体、何が「珍しい品物」だったのでしょうか? それは読んで確かめてみてください。
そして、その賭けに勝ち、丞相として権勢を振るいました。もとから強国だった秦をさらに強くしたのも呂不韋です。
呂不韋がいなければ、政が秦王になれることは絶対にありませんでした。それはつまり、中国大陸を初めて統一する「始皇帝」の存在もなかったということです。
●文化的にも重要な人物呂不韋は政治だけでなく、文化的に重要なものを後世に残しました。それが儒家・道家を中心とした諸学派の思想体系
『呂氏春秋』です。思想だけでなく、天文暦学、音楽理論、農学理論など自然科学の分野も充実している大著です。
ちなみに、とても優れた文章や筆跡のことを
「一字千金」と言いますが、これは呂氏春秋完成後に呂不韋が一般公開し、「一字でも添削ができれば千金を与える!」と公表したことが由来とされています。
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posted by すぱあく at 08:00
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