2014年04月24日

大河ドラマのようなスケールの『エリア88』

area88.jpg『エリア88』(新谷かおる、1979年〜1986年)。
これ読まないで死ぬのはもったいないですぞ〜(ムック風)と言えるマンガの古典です。
私はリアルタイムの世代ではないのですが、どの時代に読んでも熱くなれる不朽の名作です。

内容をざっくり言えば「戦闘機モノ」です。ただ、とても世界観が練られており、その全体像はまるで大河ドラマのようなスケールなのです。戦闘機に興味がない人でも楽しめる、本当にオススメのマンガです。

あらすじを簡単に述べます。
舞台は中東の架空の国、アスラン王国。そこでは内戦が起こっていました。内戦を戦っている兵士の多くは、さまざまな国から集まってきた傭兵。その傭兵の中に、なぜか日本人がいるのです。
彼の名は、風間真(かざま しん)。一騎当千の戦力を誇る超凄腕の戦闘機乗りです。

しかし彼は、志願して傭兵になったのではなく、親友と思っていた神崎悟(かんざき さとる)の謀略によって傭兵にさせられ、自由を奪われていたのでした。日本には、彼の帰りを健気に待つ津雲涼子(つくも りょうこ)というフィアンセがいました。真は果たして、この地獄のような戦場から日本に戻れるのでしょうか。
物語のモチーフは、アレクサンドル デュマの『モンテ・クリスト伯』(巌窟王)がベースになっています。

物語が進むにつれ、なぜアスラン王国で内戦が起こるようになったのかが明らかになります。そして、なぜ神崎悟が執拗に風間真を追い詰めたのかも明らかになります。こうして大きなスケールの世界観が姿を表すのです。

いつ死んでもおかしくない戦場で、戦い続ける真。彼には、ただ生きて日本に帰りたいという執念だけがありました。ところが戦い続けているうちに、戦友との間に友情が芽生えます。そして、アスラン王国での戦闘は彼の人生の一部になっていくのです。

以下は、おそらく多くの読者が「ベスト・オブ・エリア88」に上げるであろう名シーン。残りの結末は、実際に読んで目撃してください。
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2014年03月11日

『風の谷のナウシカ』のナムリス

naushika.jpgちょうど30年前の1984年3月11日に映画『風の谷のナウシカ』が公開されました。
自然の脅威を描いた作品が、奇しくも3月11日に公開されていたんですね

ところで、ナウシカには映画版と原作版(全7巻)があります。原作版2巻までの内容を元に映画版が作られ、映画公開後に3巻以降の原作が再開しました。そのとき、新しい設定が多数加えられたため、内容には結構違いがあります。

さて、私は原作版にしか登場しないナムリスというキャラクターが好きです。終盤に登場するので、知らない人は多いかもしれません。
彼は土鬼(ドルク)諸侯国連合帝国の神聖皇帝。
原作版では、この土鬼帝国と皇女クシャナがいるトルメキアの二大帝国が戦争し、それに風の谷が巻き込まれていくという設定が追加されました。

namuris.jpgナムリスは皇帝でありながら、100年間も実権を弟に奪われてきました。弟には超能力があり、ナムリスにはなかったためです。長年絶望の中にいたナムリスはいつしか狂気に支配され、他人の命は元より自分の命さえどうでもよくなっていました

彼は100歳を超えているのに、顔が若いでしょう。これこそ「命がどうでもよくなった」ことの象徴。不死身のヒドラの肉体を移植して、若返っているのです。この移植手術は成功率が低く、失敗すれば死ぬのですが、彼はその当たりがどうてもよくなっていたため、手術に成功したのです。


そして、実権を奪っていた弟がナウシカに追い詰められたときにとどめを刺し、ついにナムリスは表舞台に登場します。今まで抑圧されていたものがイッ気に噴火するエネルギーは圧倒的。宮崎駿監督が若く最もエネルギッシュだったときの作品ですからね。スゴくて当然です。この部分、映像化してほしいなぁ。

namuris02.jpg
 俺のおそれることは
 ただひとつ

 この血を一度も
 たぎらせることなく
 終わることだ






際立った存在感を放つ悪役のナムリス。まだご存じない方は、ぜひ原作版をお読みください。


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2014年01月03日

『ノラガミ』 ― 悩みながら生きている神と人間の物語

noragami.jpg1月5日からTOKYO MXなどでアニメがスタートする『ノラガミ』(2011年〜)。
高校の先輩から教えてもらって読みました。作者のあだちとか先生がご親戚だそうです。

ざっくりあらすじを述べると・・・
夜卜(やと、写真中央)は神だが、無名で祀られる社もない「自称」神。いつもジャージ姿で、加えて“住所不定無職”。「いつかメジャーな神になりたい」という思いのもと、彼の姿が見える悩み多き人間たちの依頼を賽銭5円で引き受けていた。

あるとき、不注意で中学生の女の子、壱岐ひより(写真右)を交通事故に遭わせてしまう。幸いひよりは一命を取り留めたが、事故の影響で“幽体離脱”しやすい体質になってしまい、夜トと関わるようになる。

そして雪音(ゆきね、写真左)は14歳で死去してしまった少年。死霊となって漂っていたところを神器として夜トに拾い上げられる。神器のときは“白銀の刀”となり、妖怪を滅する。生前の記憶はないが、若くして死んでしまったことに深い悲しみを持つ。

物語全体の雰囲気は、『結界師』(田辺イエロウ、2003年〜2011年)に似ています。 →関連記事
日本の神様が登場する設定は、『貧乏神が!』(助野嘉昭、2008年〜2013年)に似ています。
キャラクターが武器に変化する設定は、『ソウルイーター』(大久保篤、2004年〜2013年)に似ています。

とはいえ、
『結界師』のように、複雑すぎる組織抗争や陰謀はありません。
『貧乏神が!』のように、もの凄い数のキャラクターが登場するわけではありません。
『ソウルイーター』のように、バトルメインのマンガではありません。

やはり、『ノラガミ』だけが持っている雰囲気というものがあります。
まず、基本はメインキャラクター3人の物語です。サブキャラもいますが、数は抑えられています。そのため、3人の関係性がとても濃く描かれています。

また、彼らはみんな何かの悩みや欠けている部分を持っています。それは神である夜卜も同様です。
その欠けている部分を一人ではなく3人で、ときにはそれ以上の人数で一緒に解決する。それが『ノラガミ』だけが持っている大事な雰囲気だと思います。

『ノラガミ』には神や妖怪など非現実的なものがたくさん出てきますが、物語全体はとても現実的と感じます。
マンガには何でもできるスーパーマンがよく登場しますが、現実社会ではそんな人ほとんどいません。
それぞれの特技や経験を持ち合いながら、なんとか生きているのが“現実”ではないでしょうか

生存競争が激しいマンガ界でこうした温かい雰囲気の作品が登場し、アニメ化するまで支持を集めていることはとても嬉しいことです。掲載誌が月刊少年マガジンだったことも奏功していますよね。
これがジャンプを含めた少年週刊誌だったら、「もっとバトルをメインに! 目からビームとか出してさぁ!!」と注文をつけられるでしょうし・・・。
bisyamon.jpg青年誌だったら、「もっと、刺激を強くしてよ!!!」みたいに言われちゃうでしょうしね。
とはいえ、『ノラガミ』の毘沙門天も十分、刺激的な格好をなさっていますが・・・。


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2013年12月07日

「紅蓮の炎」は氷属性なんだって!?

「紅蓮の炎」の正しい意味を最近知りました。“炎”というけど氷属性なんだって。

酷寒のために皮膚が裂け、血が紅い蓮華の花のように見える様からとのこと。つまり火を使っていないわけです。

この言葉も元は仏教用語。八寒地獄の第七「紅蓮地獄」から来ています
だからイメージカラーはというよりはの方がしっくり来ますね。

そう考えれば、『BLEACH』の日番谷冬獅郎(ひつがや・とうしろう)の必殺技の意味も分かります。彼は氷属性の技を使いますが、卍解(ばんかい)すると『大紅蓮氷輪丸』という大技を出します。すると氷の化身が出てくるわけですが、なるほどそういうことなんですね。
hitsugaya2.jpg


とはいえ最近のトレンドなら、『紅蓮の弓矢』(『進撃の巨人』OP)の方かな。


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2013年10月28日

意外と知られていない『ルパン三世』実写版

rupin3rd.jpg国民的人気アニメ『ルパン三世』。皆さんアニメ版・映画版ともに思い入れがある作品は多いと思います。
とくに先日引退したばかりの宮崎駿が監督した『カリオストロの城』(1979年)をマイ・フェイバリット映画に挙げる人は多いですね。

さて、意外と存在を知られていないのが、『ルパン三世』の実写版です
「えっ!? そんなのあるの?」という人も多いと思います。

あるんですよ! それが『ルパン三世 念力珍作戦』(1974年)。おそらく、劇場公開された最初の作品だと思います。

気になる配役を見ますと、
ルパン三世(目黒祐樹)
峰不二子(江崎英子)
銭形警部(伊東四朗)
次元大介(田中邦衛)


五右衛門はいません。次元が田中邦衛で銭型警部が伊東四朗で、今から見ると豪華キャストです。とはいえ、当時の彼らはまだ若手俳優。来た仕事は何でも受けるという時期だったと思います。

内容はハッキリ言って超B級タイトルだけがルパンと言っても過言ではない内容です。
とてもテレビ放映するようなクオリティではないので、それでマイナーなんだろうと思います。

実写版『デビルマン』やら『ガッチャマン』がクソ映画として叩かれる昨今ですが、この映画のやっつけ感を見れば、
「まぁ映画なんて所詮娯楽だし、そんなに目くじら立ててもしょうがないな」と悟りを得られると思います
B級映画ファンは絶対見ておいた方がいい、それぐらいの破壊力を持った映画です


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2013年08月16日

『結界師』 冒険に出ない壮大な冒険物語

kekkaisi01.jpg『結界師』(2003年〜2011年、田辺イエロウ)は、
以下の点で異色のマンガです。

・冒険に出ない主人公
・直接的な攻撃をしない能力




冒険に出ない主人公
たいていの小説・マンガでは、物語が進むにつれて、舞台が変わります。RPGでは、苦心惨憺さまざまな世界を旅して、やっとラスボスのところに辿り着きます。
そこへ行くとこの『結界師』の舞台は、終始一貫して自宅の周辺です。たしかに、珍しいですよね。

主人公は二人。墨村良守(すみむらよしもり)と、隣に住む雪村時音(ゆきむらときね)。
彼らの一族は代々、空間を操る結界術という能力を持っています。

そして、二人は夜になると自宅の近くにある自分たちが通っている学校に行きます。
その学校こそ終始一貫した舞台なのです。
ここは烏森(からすもり)と呼ばれる土地の上に立っています。霊的な力が強すぎるため、夜になると妖怪が出てくる。そこで、彼らの一族は妖怪を退治する仕事をしているわけです。

物語が進むにつれて、烏森の不思議な力を我が物にしようという一派が出てきて、良守と時音は対決します。
また、なぜ烏森が妖怪を呼び寄せるようになったのかも明らかになってきます。

すると、舞台が烏森からほとんど動いていないにも関わらず、とんでもない壮大な全体像が明らかになります。この物語の構成力にただ驚くばかりです。
 ・デジタル版全巻  ・コミックス版全巻


直接的な攻撃をしない能力
彼らが使う結界術は、直接ビームが出るような能力ではなく、空間に妖怪を閉じ込めて圧殺するというもの。週刊少年ジャンプ系能力バトルのように直接的な攻撃をしない分、若干地味な能力です。

ただ、この空間を操る能力は、非常にいろんな応用ができます。四角いボックスを作って、上に乗っかるとかね

kekkaisi03.jpg

私はこれを見たとき、ファミコン黎明期の『ソロモンの鍵』(1986年、テクモ)や『火の鳥 鳳凰編 我王の冒険』
(1987年、コナミ)みたいだなと思いました。
これらのゲームでも、空間にブロックや鬼瓦を作って足場にしていました。ブロックの置き方によって、ゲームの展開も変わってくる頭を使うゲームでした。
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この『結界師』も、単純な力の強大さでなく、頭脳で戦っていく要素が強く、まさにパズルゲームを見ている感じでした。


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