『11人いる!』(萩尾望都、1975年)を単純に“少女漫画”と分類する人は、もはやいないでしょう。
すでに文学作品に匹敵するほどの不朽の名作になっているからです。
あらすじ。その異常事態は、超ウルトラ難関である宇宙大学国の最終試験において発生した。最終試験は10人1組に分かれ、それぞれが宇宙船に移動して53日間共同生活をするというもの。これは宇宙での漂泊を想定し、協調性を試す試験。途中で1名でもギブアップが出れば、残り全員が不合格になる。
しかし、スタート直後からいきなり異常事態が発生!受験生は本来10人なのになぜか「11人いる!」のだ!?
異常事態を本部に告げれば、その時点で全員が不合格。「誰が異分子なのか?」「そいつの目的は何か?」「合格できるのか」「そもそも生きて帰れるのか?」 全員が疑心暗鬼の中、53日間の共同生活が始まった。
受験生たちはそれぞれが、大きな目標を持って合格を目指しています。人生を切り開くため、寿命が極端に短い祖国の現状を変えるため、強い王としての威厳を見せるため・・・。登場人物たちの目標や過去が丁寧に描かれ、とても重厚な設定になっています。
しかし、やがて疑心暗鬼がピークに来る受験生たち。立て続けに発生する宇宙船の故障・・・。
「俺は何が何でも合格しなければならない。それなのに何だ!! 誰だ? 俺の邪魔をする奴は?」 イライラが爆発し、殺意が芽生えて来る者も。その描写は本当に恐ろしい。
果たして、彼らは無事に試験を終え合格することができるのか、それとも・・・。
夢と不安、希望と絶望が表裏一体で存在する「受験」。誰もが経験したことがあるはず。だからこそ、本作は感情移入しやすく、時代を経ても色褪せない魅力があるのだと思います。
後世の作品への影響インパクトあるタイトル、重厚なストーリーは、後世の作品に巨大な影響を与え続けています。
試験中にイレギュラーが発生するという設定は、『HUNTER×HUNTER』や『NARUTO』にも出てきますが、本作が元祖的作品といえます。

宮藤官九郎脚本の『11人もいる!』(2010年)のタイトルは、まんまですね。
右は『ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン』(荒木飛呂彦)12巻で、追っ手の存在について主人公たちが発したセリフ。『重機人間ユンボル』(武井宏之)でも、同様のシーンがありました。
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1986年にアニメ映画化。
posted by すぱあく at 09:12
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