2013年10月01日

百人一首70 良暹法師

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さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば
 いづくも同じ 秋の夕暮

★歌意
(あまりの)寂しさに耐えかねて、わが家を出てしみじみとあたりを眺めてみると、どこもかしこも同じであることよ。この秋の夕暮は。


★解説
「宿を立ち出でて」→「宿」は作者が住んでいた京都大原の草庵のこと。
「ながむれば」→しみじみとした思いで物を見つめること。
「秋の夕暮れ」→日本人が秋の夕暮れに寂しさを感じるのは古来から同じようで、この歌は代表的なものになっています。


★人物
良暹法師(りょうぜん ほうし、生没年不詳)
出自・経歴についてはほとんど不明。比叡山(天台宗)の僧で祇園別当となり、その後は大原(京都市左京区)に隠棲し、晩年は雲林院(京都市北区)に住んだといわれています。


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2013年09月30日

百人一首69 能因法師

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嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は
 龍田の川の 錦なりけり

★歌意
激しい山風が吹きあらす三室山のもみじの葉は、龍田川の水面に散り敷き、あたかも錦織りのようになるのだなあ。


★解説
「三室の山」→奈良県斑鳩町にある三室山。神南備山とも。古来より紅葉の名所。
「龍田の川」→奈良県の生駒市、生駒郡(平群町、斑鳩町)を流れる龍田川。こちらも紅葉の名所。在原業平朝臣(17番)も歌っています。
「錦なりけり」→錦は金糸・銀糸などで模様を織り出した織物。紅葉の美しさを比喩した表現。


★人物
能因法師(のういん ほうし、988年〜1050年あるいは1058年)
近江守・橘忠望の子で、出家前の名前は橘永ト(たちばな の ながやす)。26歳頃に出家。甲斐国や陸奥国などを旅しながら、多くの和歌作品を残しました。


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2013年09月29日

百人一首68 三条院

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心にも あらでうき世に ながらへば
 恋しかるべき 夜半の月かな

★歌意
(自分の)本心からではなくて(心ならずも)、つらく苦しいこの世に(今後も)生き長らえるならば、(そのときには、今宵の)夜中の月はきっと恋しく思い出されることであろう、この美しい夜中の月よ。


★解説
「心にもあらで」→不本意にも
「うき世にながらへば」→「憂き世」に通じ、辛い苦しいことの多いこの世に生き長らえること。
「恋しかるべき」→「べき」はここでは推量の助動詞。恋しくなるだろうの意。
「夜半の月かな」→「かな」は詠嘆の終助詞。


★人物
三条院(三条天皇)(さんじょう てんのう、976年〜1017年)
第67代天皇。冷泉天皇(第63代)の第二皇子で、母は藤原兼家の娘・超子(ちょうし)。もとから病弱だったことで失明し、それを理由に藤原道長から退位を迫られました。さらには、在位中に二度も内裏が焼失。何もかも嫌になって退位するときに詠んだ歌がこれ。人生への絶望を月に向かって嘆いています。ちなみに、退位した翌年に崩御。とても寂しい人生でした。


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2013年09月28日

百人一首67 周防内侍

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春の夜の 夢ばかりなる 手枕に
 かひなく立たむ 名こそ惜しけれ

★歌意
春の夜の夢のように(はかない、かりそめの)あなたの手枕によって、(実際は共寝するわけでもなく、そのような二人ではないのに)つまらなく立つであろう浮き名が、なんとも口惜しいことです。


★解説
「春の夜の夢」→短くはかないものの比喩。
「手枕」→腕枕のことで男女が共寝すること。
「名こそ惜しけれ」→相模(65番)の歌にも出てきた表現。(私の)名が、まことに口惜しいです。


★人物
周防内侍(すおう の ないし、生没年不詳)
桓武平氏周防守の平棟仲(たいら の むねなか)の娘。父の役職から周防内侍という女房名で呼ばれました。本名は平仲子(たいら の ちゅうし)。後冷泉、後三条、白河、堀河の4天皇に仕えました。主要な歌合にも度々参加し、公家・殿上人との贈答歌も残されています。


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2013年09月27日

百人一首66 前大僧正行尊

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もろともに あはれとも思へ 山桜
 花よりほかに 知る人もなし

★歌意
(私がお前のことを心なつかしく思うように)お前もいっしょに、私をしみじみと懐かしく思っておくれ。山桜よ。(このような山奥では、梅の花の)お前よりほかに、私の心を知ってくれる者もいないのだから。


★解説
「もろともに」→いっしょに、お互いにの意の副詞。
「あはれ」→しみじみと心に浸みて懐かしいの意の名詞。
「花」→古典では山桜のことを指します。
出家した僧が詠んだ歌。花を人に見たてて呼びかけています。山にこもって孤独に修行しようと思っていたのに、やはり人恋しくなるのは変わらないという心境を歌っています。


★人物
前大僧正行尊(さきの だいそうじょう ぎょうそん、生没年不詳)
参議・源基平の子。12歳で三井寺(みいでら、滋賀県大津市)に入り、17歳から諸国を遍歴。天台宗最高位の天台座主、大僧正に叙せられた高僧です。白河・鳥羽・崇徳の3天皇の護持僧になりました。


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2013年09月26日

百人一首65 相模

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恨みわび ほさぬ袖だに あるものを
 恋にくちなむ 名こそ惜しけれ

★歌意
(相手の薄情さを)恨み悲しんで、涙のかわく暇もない袖さえ、(朽ちないで)このようにあるのに、恋のために(浮き名が立って)朽ちてしまいそうな私の名が、まことに口惜しいことです。


★解説
「恨みわび」→うらめしく思い悲しむ
「ほさぬ袖だに」→「干す」の未然形で“(涙が)乾くひまもない袖さえ”の意。
「恋に朽ちなむ」→失恋して(その浮き名が立って)、心が朽ちてしまいそうな
「名こそ惜しけれ」→(私の)名が、まことに口惜しいです。


★人物
相模(さがみ、生没年不詳)
酒呑童子の討伐で有名な源頼光の養女。大江公資が相模守のときに妻になったので、「相模」の女房名で呼ばれるようになりました。この結婚は彼女にとって不本意だったようで、かねてから親交のあった藤原定頼(64番)と恋愛関係にありました。
やがて一条天皇の第1皇女、脩子内親王の女房として出仕し、当時第一流の女流歌人として活躍しました。


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