2012年06月13日

ビートルズ―ハンブルグでの下積み時代

ドイツ・ハンブルグにあるザ・ビートルズ博物館Beatlemaniaが今月をもって閉鎖されることになったそうです。
Bealemaniaが発表した声明によると、2009年5月29日にオープン以来メディアや来客者から好意的な反応があったものの、3年間の入場者数は15万人ほどで、経費をまかなえなかったそうだ。これまで赤字経営でやってきたが、これ以上の継続は困難との判断を下すしかなかったという。(2012年6月11日 BARKS)

なんか、もったいないですね。
たしかに、よっぽどの音楽ファンやビートルズマニアでなければ、下積み時代にまでは注目しないでしょうね。

そうなんです。あのビートルズにも、ドサ周りの下積み時代があったんです。
beatles2.jpgなかでも、ハンブルグは、彼らにとって縁の深い土地でした。

彼らのデビューは1962年ですが、
ハンブルグの下積み時代は、1960〜1961年の出来事になります。
右は当時の彼らの写真。
左から、ジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、ピート・ベスト、ポール・マッカートニー、スチュアート・サトクリフ
まだ、リンゴ・スターはおらず、ピート・ベストがドラムを、スチュアート・サトクリフがベースを弾いていました。

この頃の話は、映画『バックビート』(1994年)を見れば、一発でわかります。
スチュアート・サトクリフを主人公にし、デビュー前でまだ何物でもないビートルズメンバーたちの不安や野心を描いた作品です。

スチュアート・サトクリフは、ジョン・レノンと同じ美術学校の出身で、ルックスも良く、画才もピカイチの優等生でした。
ジョン・レノンはとくに彼が好きで、バンドに誘い込みましたが、音楽よりは美術の道に進むことを決意し、バンドを脱退します。

しかし、将来を嘱望されていたにも関わらず、1962年に脳出血を起こし21歳で亡くなってしまいます。
ビートルズのメンバー、とくにジョン・レノンはこの悲劇を経てデビューし、世界的・歴史的スターになっていくのです。


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2012年06月12日

ブリットポップを象徴する映画『トレインスポッティング』

前回紹介したジーザス・ジョーンズを忘却の彼方に追いやったのが、ブリットポップと呼ばれるロンドンやマンチェスターを中心に発生したムーブメントでした。

ブラー、オアシススウェード、スーパーグラス、ジーン、シェッド・セヴン、キャスト、メンズウェア、エラスティカ、スリーパー、エコーベリーなどが次々と登場した1990年代、それはそれは大変な盛り上がりでした。

trainspotting.jpgこのブリットポップを象徴する映画が『トレインスポッティング』
(1996年)でした。
スコットランドの小説家アーヴィン・ウェルシュの同名小説をダニーボイルが映画化し、まさに図ったかのようなタイミングで上映され、世界中に強烈な印象を残した作品です。
主演のユアン・マクレガーは、本作によって大ブレイクし一躍世界的スターとなりました。
本作なくしては、『スター・ウォーズ』のオビ=ワン・ケノービもなかったといっても過言ではありません。

この映画のテーマは、実はかなり暗くて、悲惨なものです。
・ドラッグに溺れる若者
・ドラッグの末に友人が死去
・不景気で仕事がない
・暴力的な友人との付き合い
・スコットランドのイギリス(UK)への歴史的な隷属構造
 ※なんと1707年から
 ・・・などなど

しかし、そうした悲惨さをカラッとした明るさで描いています。
また、BGMとしてシャワーのように流れるブリットポップの数々がカッコいいこと。
これらが絶妙にマッチして、時代を象徴する映画として大ヒットにつながりました。

当時の宣伝用トレーラーをご覧ください。とにかく、「見たくなる」ことウケアイです。


そして、見終わった後はきっと、
「人生というものはとかく退屈で、おもしろくないものだが、
 ・・・それでもなんとか生きてみるか」

という気分になってくることでしょう。

さて、この映画のもうひとつの魅力は、なんといってもブリットポップを多数収録したサントラです。
その収録曲はもはや無敵といっていいレベルです。
90年代アーティストの楽曲だけでなく、イギー・ポップ、ブライアン・イーノ、ルー・リードといったベテラン・アーティストたちの古い楽曲も収録されています。どの曲も映画の退廃的な世界観をよく表しています。
1. Lust for Life ― イギー・ポップ
2. Deep Blue Day ― ブライアン・イーノ
3. Trainspottting ― プライマル・スクリーム
4. 銀河のアトミック ― スリーパー
5. Temptation ― ニュー・オーダー
6. Nightclubbing ― イギー・ポップ
7. Sing ― ブラー
8. Perfect Day ― ルー・リード
9. Mile End ― パルプ
10. For What You Dream Of ― ベドロック(feat. KYO)
11. 2:1 ― エラスティカ
12. A Final Hit ― レフトフィールド
13. Born Slippy ― アンダーワールド
14. Closet Romantic ― デーモン・アルバーン

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2012年06月11日

遅すぎて、早すぎた悲運のバンド「ジーザス・ジョーンズ」

いかに天才でも、登場する時代にマッチしなければ活躍することはできません。
あの坂本龍馬でも、現代に生まれていたらはたして優秀なビジネスマンになれたでしょうか。

バンドもまたしかり。時代に受け入れられなければヒットしません。
jesusjones.jpgイギリスのバンド「ジーザス・ジョーンズ」は、
先見性と豊かな才能、優れたファッションセンスを兼ね備えながら、時代にマッチできずにしぼんでいったバンドです。

ジーザス・ジョーンズは、マイク・エドワーズ(写真上)が中心となって結成され、1989年にデビュー。
彼らの音楽的特徴はデジタルサウンドで、ハウスやテクノをロックにふんだんに盛り込んだ斬新なサウンドが受けて、2枚目のアルバム『Doubt』(1991年)は、世界中でヒットします。
この頃の代表作が「Right Here Right Now」や「Real Real Real 」です。

そして、3枚目のアルバム『Perverse』(1993年)では、今まで以上にデジタル色を濃くする戦略に出ます。ところが、こちらのセールスは不振に終わります。
不振の理由を分析すると、
@リスナーの嗜好は、デジタルサウンドから急速にブリットポップに移行してしまった。
A単純に、時代の先を行き過ぎていた。

@のブリットポップの隆盛は、言うまでもなくオアシス、ブラーといったバンドの台頭を意味します。オアシスのギャラガー兄弟は、しょっちゅう兄弟ゲンカしているくせに音楽の趣味は「ビートルズ」で一致していました。つまり、目指していたのは60年代から70年代のサウンドであり、デジタルサウンドの対極にある音楽です。

Aについては、彼らのサウンドは「10年早すぎた」といえます。というのも、当時セールス的に不振だった『Perverse』を今聞いみると、むしろ今の時代にこそマッチしていると思います。
例として、収録曲の「Zeroes and Ones」のPVを見てみます。タイトルの意味は「0と1」。つまりデジタル時代そのものをテーマにした曲です。



なんか、『マトリックス』(1999年)っぽくない? マトリックスよりも7年早いんだけどね。
matrix.jpg

まとめると、YMO、デュラン・デュラン、バグルス、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドなどのテクノサウンドが大流行した
80年代を起点とすれば遅すぎる登場だったし、

『マトリックス』によって爆発した2000年代サイバーパンクを起点とすると早すぎる登場だったといえます。

ただ、バンド活動としては残念な結果に終わりましたが、彼らの作品は残り続けるわけですから、ぜひ聞いてみてください。とても、いい音楽だと思いますよ。


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2012年05月14日

孤独や社会と向き合う『長距離走者の孤独』

もうすぐロンドンオリンピックということで、オススメのスポーツ本を紹介します。オリンピックの舞台となるイギリスの作家アラン・シリトーが1958年に出版した『長距離走者の孤独』です。


有名な外国古典であり、夏休みの推薦図書によく登場する作品です。しかし、実際に読んだ人は少ないのではないでしょうか。やはり、タイトルに「孤独」とあるのが敬遠されやすい理由ですね。
スポーツを題材としながら、あまりスカッと爽やかっぽくない感じです。
そう、まさに本作は爽やかなものではありません。「生きる」ことを考えさせられる“文学作品”なのです。

主人公のスミスは、友人と二人でパン屋に忍び込み強盗を働いた罪で感化院に入れられています。そのスミスが感化院を代表してクロスカントリーの選手として走ることになります。
スミスは練習中や本番で走りながら、さまざまなことを考えます。
・大人は偽善だ
・こんな練習になんの意味がある
・院長は、賞をもらってほしいだけだろ

そんな社会への怒りが文章から沸々と沸いてくるようです。

私は高校のとき陸上部で中長距離を走っていました。中長距離の練習中って、やたらといろんなことが頭を駆け巡るのです。しかも多感な高校生の脳裏には、不安や憤りが渦巻くんですね。
私は本作をまさに高校時代に読んで、大いに主人公のスミスに共感したことを覚えています

結局スミスは院長や大人たちの期待に反抗し、トップで独走していながら競技場に戻ってきたところでスピードを落とし、わざと後から来たランナーに追い抜かれます。そういった形で、彼は権威に対し必死で抵抗してみせるのです。

スミスは走ることが嫌いなわけではありません。走っているときは孤独ですが「この孤独感こそ世の中で唯一の誠実さであり現実であり、決して変わることのないという実感」であると考えているのです。

本作は短編ですから、すぐに読み終わることができます。いろいろと気付かせてくれる良作です。


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ラベル:スポーツ
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2011年02月02日

愛すべきバカ エクストリームアイロニング!!

以下の写真を見て衝撃を受けました。
iron1.jpg   iron3.jpg

iron2.jpg   iron4.jpg

屈強な白人男性が、断崖絶壁、ロッククライミング、水上、空中で何かやっています。
そうです。
アイロンをかけているんですよ。
何の冗談だと思うかもしれませんが、これは立派なスポーツで、
「エクストリームアイロニング」というのだそうです。
ちゃんとWIKIにものっています。

「いかに困難な状況で、優雅にアイロンをかけられるか」というスポーツで、
本人たちも「おバカなことをやっているな」という自覚を持ちつつ、
いたって大真面目にやっています。

はじめたのはイギリスのフィル・ショウという人物で、1999年に「このスポーツを広めよう」と世界中を行脚します(なんだ、その行動力)。
類は友を呼ぶのでしょう。「これはエクストリームだ」という仲間が世界中にできて、いつの間にかスポーツに昇格していました。
今では日本支部まであり、本まで出てます。

思うに、どこの世界にも「おバカ」はいますが、
日本の「おバカ」は内向的(ネットやマンガなど)なのに対し、
欧米の「おバカ」は外交的というか、マッチョですね。

世界不況で世相がどんなに暗くても、彼らの人生はゼッタイにHappyだと思います。


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ラベル:スポーツ
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2008年12月31日

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ブリタニア (40年〜410年)


七王国時代 (500年頃〜927年)


イングランド王国 (927年〜1707年)
:ノルマン朝 (1066年〜1135年)

:ブロワ朝 (1135年〜1154年)

:プランタジネット朝 (1154年〜1399年)

:ランカスター朝 (1399年〜1461年、1470年〜1471年)

:ヨーク朝 (1461年〜1485年)

:テューダー朝 (1485年〜1603年)
・アルマダの海戦で無敵艦隊を破る ― さかのぼりスペイン史4 斜陽の帝国
・イギリス東インド会社を設立 ― 陳舜臣 『インド三国志』

:ステュアート朝 (1603年〜 )
・シェイクスピア『テンペスト』発表 ― ロンドンオリンピック閉会式「イギリス音楽のシンフォニー」 ダイジェスト

グレートブリテン王国 (1707年〜1801年) ※イングランド王国とスコットランド王国の合同により成立
:ステュアート朝 ( 〜1714年)

:ハノーヴァー朝 (1714年〜 )


グレートブリテン及びアイルランド連合王国 (1801年〜1927年)
:ハノーヴァー朝 ( 〜1901年)
・スペイン独立戦争に援軍し、仏ナポレオンに対抗 ― さかのぼりスペイン史3 長く続く混乱の時代へ
ジャーディン・マセソン商会 創業物語
林則徐 VS ジャーディン・マセソン商会 〜そして阿片戦争へ
長州ファイブをロンドンにいざなったジャーディン・マセソン商会
ロンドンに降り立った5人の侍、長州ファイブ
・サッカーの起源 ― 「君っ、サッカーじゃない。フットボールと言いなさい」
・『緋色の研究』(コナン・ドイル)出版開始 ― 時代を超えて愛されるシャーロック・ホームズ

:サクス=コバーグ=ゴータ朝 (1901年〜1917年)
・大型戦艦ドレッドノート建造 ― 超ド級の「ド」って何?
エルガー『威風堂々』作曲。国王エドワード7世が大変気に入る
ホルスト『惑星』を作曲

:ウィンザー朝(1917年〜 )


グレートブリテン及び北アイルランド連合王国 (1927年〜)
:ウィンザー朝
ビートルズ―ハンブルグでの下積み時代
・北アイルランドで「血の日曜日事件」 ― U2で考えるアイルランド2
Internet killed The Video Star
スティング―孤独のメッセージ  ・「Englishman In New York」 ― スティングとジャズ
遅すぎて、早すぎた悲運のバンド「ジーザス・ジョーンズ」
ブリットポップを象徴する映画『トレインスポッティング』
エクストリームアイロニングが誕生
・ウィリアム王子結婚 ― 世界のロイヤルファミリー
ロンドンオリンピック閉会式「イギリス音楽のシンフォニー」 ダイジェスト
77年ぶりに「ウィンブルドン現象」が解消。次は日本人横綱の誕生に期待!

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