島田紳助やら、フジテレビデモやらで騒然としている日本の芸能界ですが、どの国でも芸能界のゴシップというのは世間の注目を集めます。
なかでも、ショウビジネスの本場であるアメリカでは、ゴシップのスケールもケタ違い。

今回のテーマは、80年代後半に巨大な人気を誇りながら、とんでもない落ちぶれ方をした
ミリ・ヴァニリというユニットのお話です。
●何人組?話のはじめとしては、
ファブリス・モーヴァン(左)と
ロブ・ピラトゥス(右)の2人組としておきます。しかし、最終的には「複数のメンバーが在籍するユニット」という言い分でした。この
「微妙すぎるメンバー構成」が後に大事件を引き起こします。
●いかに凄かったか1988年に西ドイツでデビュー後に渡米。ルックスとブームを先取りしたラップで大人気となり、3枚のシングルが全米1位の大ヒット。ヨーロッパでも巨大な売り上げを達成しました。
また、1990年にはグラミー賞の最優秀新人賞を受賞しています。
●暴露されたとんでもない秘密このヒットの要因には、やり手プロデューサーであるフランク・フェーリアンの手腕がありました。
しかし、世界的な人気を獲得するにつれ、ファブリスとロブの2人は増長し、フェーリアンと対立します。
これに怒ったフェーリアンが世間に向かって、とんでもない秘密を暴露します。
「ファブリスとロブは口パクだ。歌っているのは別人なんだ」と。
この発言は当然、大騒動を引き起こします。
渦中の2人は記者会見で口パクを認め、
「これからは自分のノドで勝負する」と語り、実際に持ち歌を歌ってみましたが、
記者たちから失笑を買うほどのレベルでした。
結局、グラミー賞は剥奪され、その上レコードも廃盤となり、ミリ・ヴァニリは事実上芸能界から追放されてしまいます。
日本の芸能界でも口パク疑惑はありますが、ライブで録音を流すというものがほとんどです。ところがミリ・ヴァニリは、別人に歌わせてどうどうとグラミーまで取ってしまいます。良くも悪くもアメリカの芸能界はスケールが大きいです。
●なんでこんなことになったのか話はデビュー前にさかのぼります。プロデューサーのフェーリアンはラップをフィーチャーしたダンスグループの結成を考え、有望なシンガーを集めていました。しかし、集まったシンガーは歌はうまいのですがルックスに難ありでした。「これでは売れない、困ったな」というときに出会ったのが、イケメンのファブリスとロブだったわけです。
そして、ファブリスとロブがルックス面を担当し、それにシンガーパートが加わった複数のメンバーで構成された「ミリ・ヴァニリ」が誕生します。
もし、このデビュー時に「ファブリスとロブは歌っていませんよ。ルックス担当なんです」とちゃんと説明しておけば、あれほどの大騒動にならなかったと思います。しかし、あれよあれよと人気が急上昇してしまい、引っ込みがつかなくなった末に悲劇となってしまいました。
なんか学歴詐称のまま当選してしまい、当選後にスキャンダルに発展する政治家のようです。
●その後の展開も予想外
話がこれで終わらないのが、アメリカ芸能界のとんでもないところ。
この騒動の後に、実際に歌っていたシンガーにフロントマンを加えて、
「リアル・ミリ・ヴァニリ」としてデビューするのです。
実際に歌っていたのは外側の2人。
たしかにルックスに難あり。プロデューサーが悩むのもわかります。
かつて、私もCDショップのワゴンで「リアル・ミリ・ヴァニリ」の日本版CDを見たことがあります。ジャケットには
「俺たちが本当のミリ・ヴァニリだ!!」と書いてありました。値段は100円でした。
それにしてもアメリカってスゴイですよね。
仮にEXILEが口パクだったとして、その後「リアル・EXILE」が出てくるような衝撃ですよ。日本ではちょっと考えられないです。(「新加勢大周」ってのはいたけどさ)
しかも、この「リアル・ミリ・ヴァニリ」、ヨーロッパではしっかりヒットしています。
●最後の転落っぷりも伝説レベルさて、芸能界を追放された2人は「ロブ&ファブ」として再デビューしますが、見向きもされませんでした。
そして、ロブはドラッグやアルコールに溺れた挙げ句に強盗事件を起こし、カリフォルニアの刑務所に3ヶ月間服役します。そして、その後
オーバードース(薬物過剰摂取)によって死去してしまいます。
残ったファブリスは一人で細々と活動しているらしいとのこと。
教訓
「増長してはいけない」ということでしょうか。
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