前編で簡単にイスラエルとユダヤ人の歴史について触れました。実は、この歴史と現状を知ることが、なぜイスラエルで最先端技術が発達してきたのかを理解するカギになります。

また技術の発展を語る上で、軍隊の存在も大きいです。イスラエルには徴兵制度があり、ほとんどの国民が大学に進学する前に軍隊に入隊します。そして、そこでテクノロジーに関する教育を受けます。兵役が終了した後、軍の最先端技術に触れた若者たちは、それらを応用して相次いで起業。国もそれを奨励しているため、軍事技術の民間転用がどんどん行われているというわけです。
さらに教育面においても、コンピューターのプログラミングを積極的に導入。最近では幼稚園で科学技術に関する実験や、遊びの時間を年間300時間設けるという実験的なプロジェクトも開始。技術革新を将来にわたって持続するための取り組みが進められています。以上見てきたように、イスラエルはテクノロジーの力を駆使して土地を開拓し、軍隊の力をつけ、国家としてのシステムを築いてきました。これらが技術革新の良循環を生んでいるのです。
●とにかく自立心が強い起業家マインド
こうした教育システムに加えて、イスラエル人つまりユダヤ人はそもそも自立心が強い民族性があります。あまりに苦難の歴史が長かったことに加え、今も紛争地域のど真ん中にいるため、国が守ってくれるとか、人が何とかしてくれるという発想がありません。これが起業家精神を育むのにひと役買っています。もしも、自分の息子が大企業に入れたとしても、「なぜ自分の会社を興さないのか」と聞く親も多いそうです。それだけ起業に対するイメージが良く、肯定的に後押しされる社会だからこそ、若者はどんどん起業にチャレンジするわけです。この当たりの発想は、日本人とは対局にあります。
●彼らにも弱点があり、そこが日本人の出番
しかし、イスラエル人にも苦手なことが当然あります。自立心が強いということは、その反面、他人との協力体制を作ることが苦手です。そのため、地道な改善・改良・量産が発展しません。つまり、彼らが苦手なことこそ、日本人および日本企業が得意なことなのです。ですから、日本企業がイスラエルに投資・進出することは、大きな意味があるといえます。
これまで日本は産油国であるアラブ諸国との関係から、イスラエルとは距離を置いてきましたが、最近少しずつ投資・進出に向けた動きが出てきました。まず日本政府がイスラエルとの経済交流を活発化させようとしています。それを受けて、JETROも投資セミナーを各地で開催し、情報の拡大に努めています。
幸いにも、イスラエルは親日国といえます。一番は杉原千畝(すぎはら ちうね、1900年〜1986年)の存在が大きいです。杉原は第二次世界大戦中に外交官だった人物で、リトアニアの領事館に赴任していたとき、ナチス・ドイツの迫害から逃れてきた難民たち大量のビザ(通過査証)を発給し、およそ6,000人にのぼるユダヤ人を救済しました。このエピソードについては多くの書籍で紹介されており、2015年には唐沢寿明主演で映画『杉原千畝 スギハラチウネ』

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ラベル:ユダヤ