
ここ最近、各メディアで「中東のイスラエルがアツい!」といったニュースが流れるようになりました。先日NHKのニュースでも、1月にイスラエルの商業都市テルアビブで開かれたサイバーセキュリティの見本市の様子を紹介。イスラエルのセキュリティ分野は、アメリカよりも進んでいると言われており、その先端技術を見ようと世界中から多くのビジネスマンが参加していました。
日本企業もはじめて6社合同でブースを出展。資源の乏しい日本は、産油国であるアラブ諸国との関係を無視するわけにはいかず、イスラエルとは距離を置いてきただけに大きな変化です。
注目の技術はセキュリティだけにとどまりません。クラウド、医療、農業、教育、そして今話題のFinTechにいたるまで、さまざまな分野で革新が進んでいます。現在のイスラエルが「中東のシリコンバレー」と呼ばれているゆえんです。
●苦難の連続ながらも、あらゆる分野で力を発揮してきたユダヤ人
ここではイスラエルおよびユダヤ人の歴史について、少し触れます。聖書を育んできたぐらい悠久の歴史がありますので、本当に簡単に述べます。
まず、イスラエルについて日本人が抱く一般的なイメージは、1948年の建国以来続くパレスチナを含めたアラブ社会との紛争だと思います。領土問題に加えて、宗教問題が重なってくるため理解し合うのが困難で、解決は容易ではありません。日本では爆撃やテロといったニュースぐらいしか流れないので、イスラエルに「旅行したい」と思う人は超少数でしょう。
一方で、歴史や宗教などに詳しい人にとっては、イスラエル国民であるユダヤ人に興味があるかもしれません。古代から歴史に名を残す古い民族ですが、その歴史は苦難の連続でした。紀元前722年に古代イスラエル王国が滅亡してからユダヤ人は各地に離散し、迫害や差別などに苦しみながら生き続けてきました。
それでも、彼らの独特な教育方針の賜物で、あらゆる分野で才能を発揮していきました。そのひとつが金融業です。「金貸し」とさげすまれていた仕事が、現在の金融業のように発達したのはユダヤ人の影響が大きいでしょう。とくに有名なのがロスチャイルド家で、18世紀から各国の王室、政治・経済に影響を与えるほど大きくなっていきました。その影響力は今日の金融業においても大きいため、「ユダヤ人=陰謀論」に結び付けられる一因になっています。
近現代になると、アインシュタインなど科学分野で才能を開花させるユダヤ人が数多く登場。さらにノーベル賞受賞者の約2割がユダヤ人(当然ながら、国籍は様々)が占めるという驚異的な実績を誇っています。
そして現在は、コンピューター、ゲーム、ITといった分野でも大活躍。日本のゲームメーカーであるセガやタイトーの創業者はユダヤ人ですし、Google創業者の一人であるラリー・ペイジもユダヤ系です。
●ビジネスの発展が、地域の緊張緩和をもたらすことに期待
19世紀から、「ユダヤ人による国家を建設しよう」というシオニズム運動が起こります。これにユダヤ人の影響力を利用しようと考える国家の思惑などが複雑に絡み合いながら、結果的に1948年にイスラエルが建国されます。
しかし、元から住んでいたパレスチナの人々を迫害してイスラエルを建国したため、アラブ社会との深刻な対立が生まれます。何度も戦争・紛争が起こり、今も続いています。迫害されていたユダヤ人が、今度は迫害する方に回った形になり、欧米を中心に草の根レベルのボイコット運動、デモ活動の対象になっています。
以上のように、荒れた歴史を歩んできたイスラエル。これに加えて中東諸国では内戦や難民、テロなどが相次ぎ、明るいニュースがほとんどありません。それだけに、「中東のシリコンバレー」として、別の一面がクローズアップされることは、地域の安定にひと役買うことが期待されています。
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ラベル:ユダヤ