北京は、現在の中国の首都ですが、遡れば元代(13世紀末)から中華世界の首都として機能してきました。人口規模は18世紀で100万人以上。影響力も含めて、中世アジアはおろか世界最大の都市でした。
一方の日本。鎖国して小さくまとまっていた感じがありますが、意外にそうでもない側面もあります。
とくに江戸。
徳川家康が江戸幕府を開始した1603年当時、江戸の人口は10万人ぐらいと思われます。ところが、18世紀には100万人を突破。人口規模では、北京と同等だという……。日本と中国じゃ、国の大きさが全然違うんだよ。ちょっと、あり得なくね……。
江戸と清朝の北京、そんな二つの都市を比較して、共通点や異なる点を発見していきましょうという趣旨が、この展覧会。実際、面白かったです。
●江戸時代と清朝、共通点が結構ある
江戸時代の開始は1603年。満州族の愛新覚羅氏が、北京に入城して中国支配を開始したのが1644年(清朝そのものは、1616年に建国)。つまり、始まりの時期が近いのです。
江戸幕府は3代将軍・徳川家光の頃から鎖国を開始しますが、例外的に清朝とは長崎を窓口として交易を行っていました。二つの都市に共通の文化が育まれるのも当然といえましょう。

「熈代勝覧」 江戸時代・1805年(文化2)頃 ドイツ・ベルリン国立アジア美術館蔵

「乾隆八旬万寿慶典図巻」 清時代・1797年(嘉慶2) 中国・故宮博物院蔵【日本初公開】
往来する人々で賑わう江戸と北京の街並み。絵の構図も似ています。二つの街を比較するだけで、とてもワクワクしますね〜。
場内には江戸時代と清朝の対比年表もあって、わかりやすかったです。
江戸幕府が参勤交代などを行い、諸藩の力を抑制することで支配を確立したのと同様、
清朝も康熙帝、乾隆帝の治世で支配体制を盤石なものにしました。そして両朝は、長い太平の世を築くのでした。
絵画の他にも、陶磁器、衣服、書画、書物などを展示。共通点や異なる点を比較すると、楽しみも倍になります。
こうした海外の都市との比較をテーマにした展覧会は、実はあまり前例がありません。それだけに、とても新鮮でした。今後も、『江戸とロンドン』、『江戸とイスタンブール』といった展覧会が開催されることに期待したいですね。
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ラベル:美術館・博物館めぐり