
これは前野良沢(演:片岡愛之助)、杉田玄白(演:新納慎也)、中川淳庵(演:村上新悟)といった医学者たちが、オランダ語で書かれた医学書『ターヘル・アナトミア』を苦心惨憺の末に翻訳し、『解体新書』として出版を実現するまでの物語。
オランダ語の辞書が存在しないため、暗号解読のような手法で一語一語、翻訳していく杉田玄白たち。それは気の遠くなるような作業。今の時代の私たちでさえ、辞書があったって外国語長文の翻訳は大変なのに……。
その苦労について杉田玄白は回顧録『蘭学事始』で、「櫂や舵の無い船で大海に乗り出したよう」「1年経ってもほとんど翻訳が進まず」と語っています。
しかし、何度挫折しそうになっても翻訳作業を続けたのは、これが実現したら先進の西洋医学を導入できる、新たに助かる命があるという情熱と使命感からでした。そしてついに、1774(安永3)年、『解体新書』の出版を実現させます。先人たちの奮闘ぶりに心が震えました。
●外国語教育の「読み」「書き」中心主義の走り
見事に『解体新書』を出版させた杉田玄白たち。これにより日本の医術は飛躍的に向上することになりました。加えて、西洋の先進的な技術や学問に注目が集まり、人々は鎖国の眠りから覚め始めます。こうして討幕、近代化への流れが加速していくことになるのです。
さて、こうした成功例は日本の近代化を推し進めた一方で、現代にまで続く「負の遺産」も生み出したように感じます。それが外国語教育の「読み」「書き」中心主義です。
日本人は英会話スキルがかなり低いことで有名ですが、それもそのはず。学校の外国語教育では「読み」「書き」が中心で、「会話」や「ヒアリング」が軽視されているのですから。
これはやはり、幕末、明治維新にかけて、西洋諸国の先進的な文献を翻訳し、富国強兵を実現させた成功体験があるからだと思います。それはとても素晴らしいことですが、それ以外が軽視されてきたことは残念なことです。さすがにそろそろ次の段階に移行してもいいのではと感じています。
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