本書、『鯨分限』(くじら ぶげん、伊東潤)は、幕末の紀州太地(たいじ)を舞台に捕鯨を生業とする人々の生き様を描いた小説です。
あれっ、「太地」って、何か聞いたことがあるなぁ。それもそのはず、連日報道されているIWC(国際捕鯨委員会)脱退によって捕鯨再開に沸いた「和歌山県太地町」のルーツだから。
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この小説を読めば、太地が捕鯨を始めたのが最近の話じゃないことがわかります。軽く400年以上の歴史があるんです。しかも、江戸時代において捕鯨がもたらす富は莫大なものだったことも描かれています。なにせあの巨体です。一頭しとめれば、肉から油から相当な財産になります。全盛期には漁師である彼らが、財政難にあえぐ藩にお金を貸すほど潤っていたそうです。
その一方で、生活の糧を与えてくれる鯨をしっかり敬い、畏れながら漁を行っていたことも描かれています。決して、「ヒャッハー、鯨めっ!」という狩りをしていたわけではないようです。太地の人々にとって、捕鯨は文化であり信仰とも言えるのかもしれません。
とはいうものの、反捕鯨団体からすれば、「捕鯨=悪」であり、太地はさしずめ「悪の巣窟」というイメージなんでしょう。ここには、決して交わることのない主張の相違があり、話し合いでの解決はほぼ不可能です。
(>_<;) 世界から戦争や紛争が絶えない理由がここにもあります。
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