
●ビットコインの生みの親、サトシ・ナカモト
ビットコインの原理は、「中本哲史(サトシ・ナカモト)」という人物によって書かれた論文が基礎になっており、2009年に運用が開始されました。サトシ・ナカモト、ん、日本人?と思うでしょう。ただ、すべてが謎に包まれている人物で、これまで正体に関してさまざまな憶測が流れてきました。
メディアやジャーナリストたちは彼の正体を取材し、結果、何人かの候補を挙げてきました。数学者、エンジニア、投資家などなど、挙がったのはドリアン中本、ジョン・ナッシュ、ニック・サボーといった人物たち。一番新しい説が、オーストラリア人の投資家であるクレイグ・S・ライト。それにしても、謎の人物が提唱した技術が一人歩きして、革新をもたらしているのですから、マンガのような話が現実に起こっているわけです。
●電子マネーとは根本的に異なる
ビットコインは仮想通貨と紹介されることが多いため、Suica、nanaco、Waonといった電子マネーのような類と思ってしまいます。しかし、電子決済できる部分は同じですが、存在や価値の成り立ちが根本的に異なります。
Suica、nanaco、Waonはいずれも「日本円」を電子マネー化したものです。つまり、日本政府がその価値を保証しているわけです。では、ビットコインは何の、どこの通貨でしょうか?米ドル、ユーロ、中国・人民元?正解は、どこの国の通貨でもなく、独立した価値を持っています。しかも、中央銀行のような強大な権限を持っているところが存在しているわけでもなく、利用者全体で発行し管理しているのです。これこそが、これまでの貨幣史になかった発想であり、ビットコインが画期的なところなのです。
●金相場に例えるとわかりやすい
ビットコインは「金(ゴールド)」に例えると、その概念が理解しやすいです。金は中央政府によって発行されているわけでも、その価値にお墨付きを与えるわけでもありません。世界中の誰もが「金には価値がある」と考えているため、市場が形成されて取引が行われ、相場が存在するのです。加えて、金の埋蔵量には限界があり、その数を自由に増やすことができないことも価値の信頼性を高めています。
金と同様に、ビットコインには中央政府の存在はありません。加えて、ビットコインには独自のプログラムにより、発行量に限度が設定されています。つまり、金の埋蔵量と同様に限界があることで信用性を作っているわけです。
ちなみに、ヨーロッパのように歴史的に多くの紛争があった地域では、金の所有意識が高いです。国家や政権が転覆すれば、貨幣は紙くずになってしまいますが、金なら大丈夫だからです。反対に、紛争や内乱がほとんどなかった日本のような国では、金の所有意識が低く、国家が保証する通貨への信頼が絶大だと言えます。
こうした国家の安定・不安定によって、ビットコインに対して抱くイメージも大きく異なります。例えば現在の中東、とくにシリアでは、長引く内戦で多数の難民がヨーロッパに渡る問題が発生しています。こうした国では、ほとんど通貨の意味がありません。国民も政府など一切信用していません。すると、金のようなものが重宝されますし、ビットコインのような独立した価値を持つ通貨への期待が高まるわけです。
反対に、日本では今のところ、このような内戦状態、混乱状態に陥ることが想像しにくいため、ビットコインに対して「怪しい」というイメージがつきまといます。ただ、危機意識が高く、国家が保証する価値がいつ消失してもいいように準備している人たちにとって、ビットコインは大きな注目を集めています。
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