主人公のひとりは、暴力団『北彰会』会長の北条彰(ほうじょう あきら)。
もうひとりが、秘書から後に代議士になる浅見千秋(あさみ ちあき)。
相反する世界に身を置く二人ですが、裏でつながっています。二人は他者が入り込むことができないほどの強固な強い絆でつながっています。それは、まさにサンクチュアリ(聖域)。
二人の出会いは少年時代。親の仕事の都合で、カンボジアに来ていたときに出会います。このとき、カンボジア内戦に巻き込まれ、家族は殺されてしまいます。これは1975年頃から始まる悪名高いポル・ポト政権による大虐殺のことを指しています。300万人以上が殺されたと言われる驚異の大虐殺。二人は命がけでカンボジアを脱出。日本に帰国します。

二人は愕然とします。
「オレが日本に帰ってきて・・・
初めて日本人を見た時・・・
こいつら“生きる”って事をどう考えているんだろう・・・
まず、そう思った・・・・・

同じ高校に進学した二人は、日本の再構築を考えます。そのためには政治家になるべきだと。しかし、日本の場合、世襲議員以外の人間がに政治家になるのは難しい。何より莫大な金がかかる。
そこで、北条は暴力団に入ることを決意。「人が一生かかる金を、一日で稼げるから」という理由で。そして、政治家を目指す浅見を裏でサポートしていくのでした。
二人とも若い時期は苦しい下積みを続けますが、自分たちが掲げた夢に向かって、不屈の闘志で戦っていきます。そして、北条は極道の世界で日本を統一するまでに。浅見は代議士当選後、政界再編の起爆剤になっていくのです。
大袈裟すぎるほど大袈裟なバイオレンス漫画ですが、政治・選挙に関心を持つキッカケになるのではないでしょうか。

彼が象徴している「旧勢力、守旧派の打倒が、新しい時代を開く」というわかりやすいストーリーが用意されています。それを見ているだけでもワクワクします。ただ、それはあくまで表側のメッセージ。
裏側には、「最大の敵はこのようなラスボスではなく、無関心でいることだ」というメッセージが込められています。
北条は腹心の部下である田代に質問します。「おまえ自分のガキ 何になって欲しい!?」
「さァ・・・・・」と返答に詰まる田代。その後、街の会社員たちを見て、
「ただ・・・あいつらの様な人間にゃなって欲しくないってだけですよ」と答えます。

私は学生時代に本書を読み、脳天を貫かれたような衝撃を受けました。
要するに「無関心でいると、バカになっちゃうよ!!」ってことです。自分の中で危機感が顕在化し、無我夢中で何かを模索していったことを覚えています。無関心とは、それほどリスクのある行為なのです。
こういう角度から政治・選挙を語ってくれる大人は、周りにはほとんどいないでしょう。たいていは退屈な政策とかを話題に出しますからね。それだけに本書は貴重な存在。時代が変わっても、色褪せることのない名作です。
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