さて、ジャーディン・マセソンは、日本史に大きな影響を与えながらも、現代ではすっかり過去のものになっています。ところが香港に行けば、あらゆる所でジャーディン・マセソンを見ることができます。
目指すは銅鑼湾(英語:コーズウェイベイ、広東語:トンローワン)。ここはイギリス政府によってジャーディン・マセソンへ払いさげられた土地。何もなかった土地をジャーディン・マセソンが開発してきたため、ゆかりのものをたくさん見ることができます。
一つ目のお目当てはヌーンデイ・ガン(怡和午砲)。正午になると空砲が打たれ、時報の役目を果たしています。ジャーディン・マセソンが伝統的に行ってきたこの習慣は、今も変わらず行われています。
ここに行くためには、地下鉄「銅鑼湾駅」を降りて北に向かいます。目印はエクセルシオールホテルで、ここの地下駐車場から道路下のトンネルを通るのが一番便利。ちなみに、このホテルもジャーディン・マセソンが運営しています。
この銅鑼湾には、ジャーディン・マセソン由来の地名が多く残っています。例えば、怡和街(イーウー・ストリート)。
怡和洋行というジャーディン・マセソンの中国語名から命名された通りです。太平洋戦争で日本軍が香港を占領したとき「春日通」と改名されましたが、終戦後に元の名前に戻りました。
ウィリアム・ジャーディンの中国語名「威廉・渣甸」から命名された地名もたくさんあります。
渣甸橋(ジャーティン・ブリッジ)、渣甸街(ジャーティン・バザール)、渣甸坊(ジャーティン・クレセント)、渣甸山(ジャーディン・ロックアウト)など。
ジェームス・マセソンの中国語名「・姆士・马地臣」から命名された勿地臣街(マセソン・ストリート)もあります。
さて、今度は「銅鑼湾駅」から3つ目の「中環駅」(セントラル)で降ります。北側にあるのが、ジャーディン・ハウス(怡和大廈)。ジャーディン・マセソンのヘッドクォーターであり、あらゆるオペレーションが進められている場所です。
地上52階建の超高層ビルで1973年にオープンしました。当時はアジアで最も高いビルで、香港ナンバーワンの企業として威容をアピールするのに十分でした。すでに築40年を過ぎていますが、中はキレイに整備されていて古さを感じさせません。
1階にスターバックスがあるのは、ジャーディン・マセソンが香港での運営権を持って展開しているからなんですね。
「中環駅」の南側には、ジャーディン・マセソンが運営するマンダリン・オリエンタル香港(香港文華東方酒店)があります。ジャーディン・ハウスが建設されるまでは、ここにジャーディン・マセソンの本社がありました。
超高級ホテルなので縁がないと思わずに。お食事だけを楽しむこともできます。とくに
クリッパーラウンジの「アフタヌーンティ」はオススメです。これは紅茶といっしょに軽食やお菓子を食べるイギリス発祥の文化。一流のパティシエ、ショコラティエが作るクリッパーラウンジのお菓子は絶品です。
アフタヌーンティは15:00〜18:00まで。予約は受け付けていないので満席になりやすいですが、階下のロビーでソファーに座りながら待つことができます。
香港はもとより、中国、日本で大きな影響を与えてきたジャーディン・マセソンは、今も私たちの生活に深く関わっていることがわかります。歴史を縦断し地域を横断することでさまざまな発見がある、同社はそれを教えてくれます。
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