たいていのマンガ原作モノは「儲かりそうだから。人気が出そうだから」という理由で、企画が先行されて映画化されます。そして、演技がつたないのに人気女優・俳優が出演したり、原作とは関係のないオリジナルストーリーが展開され、結果的に一体どんな層をターゲットにしたかったのか意味不明な仕上がりになっていく。そんなパターンが繰り返されていると感じます。
その反面、この『ピンポン』はキャラクターの造形はもちろん、ストーリーも原作のものを大事にしており、とにかく原作への愛が溢れています。かなりヒットした映画なので多くの方が見たと思いますが、ぜひ松本大洋の原作マンガも読んでほしいですね。とにかく迫力が凄まじく、ミサイルを撃っているようなラリーを見せます。
そして、もう一つの魅力が「人間ドラマ」です。スポーツでも何でも、勝者がいると同時に敗者がいます。フツーのスポーツマンガなら、それら敗者にスポットを当てることはありませんが、この『ピンポン』では敗者も温かい雰囲気で包みます。それが素晴らしくてね。
私が好きなのはラストシーン。高校での激闘から5年経ち、みんな社会人になっていました。ペコはドイツで活躍するほどの超一流の卓球選手に成長。その一方で、高校時代は無敵の強さを誇っていたドラゴンは、すでにピークを過ぎてしまっていました。卓球選手にはなったものの、代表メンバーからもはずされるという寂しさ。
でも、本人の表情は高校時代の修行僧のような表情からは一転。とても明るくなっていました。おそらく、彼自身はこれまで全力で生きてきたことに「納得」できているのだと思います。
そう、人生の選択肢は決して一つではないんですよね。卓球では一流になれなかったとしても、ビジネスや芸術の世界で一流になれるかもしれない。この作品からはそんな未来への希望や温かさが感じられます。
このシーンは、映画にはないものなので、ぜひ多くの人に原作マンガを読んでほしいです。
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