
風そよぐ ならの小川の 夕暮れは
みそぎぞ夏の しるしなりける
★歌意
風がそよそよと楢の葉に吹いている。このならの小川の夕暮れは、(秋の訪れを思わせるようであるが、)ただ(この川のほとりで行われている)みそぎの行事だけが、まだ夏であることの証拠なのだなぁ。
★解説
「風そよぐ」→「そよぐ」はそよそよと音を立てる意。
「ならの小川」→上賀茂神社(京都市北区)の中を流れる御手洗川のこと。ブナ科の楢との掛詞。
「みそぎぞ夏のしるしなりける」→「みそぎ」は「身そそぎ」がつづまった語で、川の水で体を洗い、罪や汚れを清めること。年中行事として6月と12月に行われる神事。
★人物
従二位家隆(藤原家隆)(ふじわら の いえたか、1158年〜1237年)
権中納言・藤原光隆の次男。藤原俊成(番)に師事し、和歌を学びました。歌人としては晩成型でしたが、やがて同時代の藤原定家と並び称される歌人として評価されました。
晩年になっても創作に励んでいた多作の人で、生涯に詠んだ歌は六万首もあったと言われています。
経歴
公卿前
19歳:侍従 ?歳:阿波介 ?歳:越中守 35歳:(辞)侍従、<正五位下> 43歳:<従四位下>
48歳:宮内卿 62歳:(辞)宮内卿
公卿後
62歳:<正三位> 77歳:<従二位> 79歳:出家、死去
★関連記事
・百人一首一覧
・日本史 年代別記事一覧