
夜もすがら もの思ふころは 明けやらで
閨のひまさへ つれなかりけり
★歌意
一晩中、(冷淡な人を恋しがって)物思いをしているこの頃は、夜はなかなか明けきらないで、寝室の戸の隙間までも、(朝の光をもらしてくれないで)薄情であることよ。
★解説
「夜もすがら」→夜通し、一晩中。
「明けやらで」→明けきらないで。
「閨のひまさへ」→寝室の板戸のすき間。
「つれなかりけり」→冷淡であることよ。
冷淡な男が通ってこないのを恨んでいる歌。男を待つ夜は長く、せめてもの救いは、朝の訪れ、朝の光であるのに、その光さえもさしてこない。「閨のひま」さえ自分に薄情だと嘆いたもの。
★人物
俊恵法師(しゅんえ ほうし、1113年〜1191年頃)
源経信(71番)の孫。源俊頼(74番)の子。17歳のときに父と死別してから東大寺の僧になり、それから約20年もの間は作歌活動とは無縁でした。40歳以降から創作意欲が溢れ出し、自邸の「歌林苑」に歌人たちを集めて毎月、歌会を開きました。
ちなみに、『方丈記』の作者である鴨長明の和歌の師匠でもあります。
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