
契りおきし させもが露を 命にて
あはれ今年の 秋もいぬめり
★歌意
(「私がいる限りは頼みにせよ。」と)約束しておいて下さった、あのさせも草に置いた露のような、ありがたいあなたのお言葉を命としてきましたが、あぁ今年の秋も(望みが叶わないままに)むなしく過ぎていくようです。
★解説
「契りおきし」→約束しておいた。
「させもが露」→「させも」はさしも草(よもぎ)のこと。
「命にて」→命として、生きる力として。
「あはれ」→「あぁ」という感動詞。
「いぬめり」→「往ぬめり」と書き、「過ぎていくように思われる」の意。「めり」は推量の助動詞。
★人物
藤原基俊(ふじわら の もととし、1060年〜1142年)
藤原氏の主流である藤原北家の出身で藤原道長の曾孫でしたが、官位には恵まれまず、後に出家します。家柄が良くても出世できないことがあるのは、いつの世も同じようです。
源俊頼(74番)とともに歌壇の指導者として活躍しましたが、俊頼が革新的な作風であったのに対し、基俊は古風な作風を重んじて対立しました。
経歴
<従五位上>左衛門佐(?歳)→死去(82歳)
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