
心にも あらでうき世に ながらへば
恋しかるべき 夜半の月かな
★歌意
(自分の)本心からではなくて(心ならずも)、つらく苦しいこの世に(今後も)生き長らえるならば、(そのときには、今宵の)夜中の月はきっと恋しく思い出されることであろう、この美しい夜中の月よ。
★解説
「心にもあらで」→不本意にも
「うき世にながらへば」→「憂き世」に通じ、辛い苦しいことの多いこの世に生き長らえること。
「恋しかるべき」→「べき」はここでは推量の助動詞。恋しくなるだろうの意。
「夜半の月かな」→「かな」は詠嘆の終助詞。
★人物
三条院(三条天皇)(さんじょう てんのう、976年〜1017年)
第67代天皇。冷泉天皇(第63代)の第二皇子で、母は藤原兼家の娘・超子(ちょうし)。もとから病弱だったことで失明し、それを理由に藤原道長から退位を迫られました。さらには、在位中に二度も内裏が焼失。何もかも嫌になって退位するときに詠んだ歌がこれ。人生への絶望を月に向かって嘆いています。ちなみに、退位した翌年に崩御。とても寂しい人生でした。
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