
もろともに あはれとも思へ 山桜
花よりほかに 知る人もなし
★歌意
(私がお前のことを心なつかしく思うように)お前もいっしょに、私をしみじみと懐かしく思っておくれ。山桜よ。(このような山奥では、梅の花の)お前よりほかに、私の心を知ってくれる者もいないのだから。
★解説
「もろともに」→いっしょに、お互いにの意の副詞。
「あはれ」→しみじみと心に浸みて懐かしいの意の名詞。
「花」→古典では山桜のことを指します。
出家した僧が詠んだ歌。花を人に見たてて呼びかけています。山にこもって孤独に修行しようと思っていたのに、やはり人恋しくなるのは変わらないという心境を歌っています。
★人物
前大僧正行尊(さきの だいそうじょう ぎょうそん、生没年不詳)
参議・源基平の子。12歳で三井寺(みいでら、滋賀県大津市)に入り、17歳から諸国を遍歴。天台宗最高位の天台座主、大僧正に叙せられた高僧です。白河・鳥羽・崇徳の3天皇の護持僧になりました。
★関連記事
・百人一首一覧
・日本史 年代別記事一覧