恨みわび ほさぬ袖だに あるものを
恋にくちなむ 名こそ惜しけれ
★歌意
(相手の薄情さを)恨み悲しんで、涙のかわく暇もない袖さえ、(朽ちないで)このようにあるのに、恋のために(浮き名が立って)朽ちてしまいそうな私の名が、まことに口惜しいことです。
★解説
「恨みわび」→うらめしく思い悲しむ
「ほさぬ袖だに」→「干す」の未然形で“(涙が)乾くひまもない袖さえ”の意。
「恋に朽ちなむ」→失恋して(その浮き名が立って)、心が朽ちてしまいそうな
「名こそ惜しけれ」→(私の)名が、まことに口惜しいです。
★人物
相模(さがみ、生没年不詳)
酒呑童子の討伐で有名な源頼光の養女。大江公資が相模守のときに妻になったので、「相模」の女房名で呼ばれるようになりました。この結婚は彼女にとって不本意だったようで、かねてから親交のあった藤原定頼(64番)と恋愛関係にありました。
やがて一条天皇の第1皇女、脩子内親王の女房として出仕し、当時第一流の女流歌人として活躍しました。
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