
朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに
あらはれわたる 瀬々の網代木
★歌意
夜がほのぼのと明けてくる頃に、宇治川一面にたちこめていた川霧が、絶え間を見せ始め(晴れてきて)、次第に現れてくる、浅瀬ごとに仕掛けた網代木よ。
★解説
「朝ぼらけ」は31番を参照。
「宇治の川霧 たえだえに」は宇治川(京都府)に立ち込めた霧が、途切れ途切れにという意。
「網代木」は、浅瀬で魚を獲るために竹や木を編み重ねて張る漁具の支柱の杭のこと。霧が晴れてきたら、網代木と漁をしている人々が見え、景色の変化にハッとする歌です。
★人物
権中納言定頼(藤原定頼)(ふじわら の さだより、995年〜1045年)
権大納言・藤原公任(55番)の長男。権中納言、正二位まで上り、順調に出世した人生といえます。
少し軽薄な性格だったようで、小式部内侍(60番)に意地悪をしたら、逆にやり込められてしまいました。それでも、音楽・読経・書が得意で容姿も優れ、女性にはもてたようです。
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