いにしへの 奈良の都の 八重桜
けふ九重に にほひぬるかな
★歌意
昔の奈良の都で咲いていた八重桜が、今日は(この平安の都の、この)宮中に、一段と美しく咲きほこっていることでございますよ。
★解説
「いにしへ」と「今日」、「八重」と「九重」が対象表現になっています。
「今日九重に」は、「今日」と「京」、「九重(=宮中)」と「ここの辺」が掛詞。
「にほひぬるかな」の「にほひ」は、香りではなく、美しく咲いている意です。
★人物
伊勢大輔(いせのたいふ、989年頃〜1060年)
伊勢神宮の祭主・大中臣輔親の娘。大中臣能宣(49番)の孫。高階成順と結婚し、康資王母、筑前乳母、源兼俊母など優れた歌人を生みました。
一条天皇の中宮・藤原彰子に仕え、和泉式部(56番)、紫式部(57番)らと親交がありました。晩年は白河天皇の教育にあたりました。
この歌は、奈良から献上された八重桜を受け取る役目を紫式部から譲られ、さらに藤原道長から「即座に和歌を詠んでみなさい」とムチャ振りされたときのものです。このときの伊勢大輔は新参女房で、目の前には中宮彰子がいました。ガチガチに緊張しながらもこの歌を詠みあげ、その出来栄えから「ブラボー」とスタンディングオベーションされました。
★関連記事
・百人一首一覧
・日本史 年代別記事一覧