
やすらはで 寝なましものを 小夜更けて
かたぶくまでの 月を見しかな
★歌意
(あなたのやってくるのを、あてにしなかったならば)ためらわずに寝てしまいましたでしょうに。(今か今かとお待ちしているうちに)夜が更けて、とうとう西の山に傾く月を見る時間までお待ちしたことでございますよ。
★解説
「やすらはで」は“ためらわずに”の意。
「寝なましものを」は“寝てしまったことだろうに”の意です。
「かたぶくまでの」は(夜が明ける頃になり)月が西山に“傾くまでの”意。つまり、その月を見る時間まで寝ないで男をずっと待っていたということ。男への恨みを込めた歌です。
★人物
赤染衛門(あかぞめえもん、956年頃〜1041年)
赤染衛門は赤染時用の娘。大江匡衡(まさひら)の妻。
歌は男への恨みを込めていますが、赤染衛門夫婦が仲が悪かったわけではありません。『紫式部日記』によれば、大江匡衡と赤染衛門はおしどり夫婦として知られており、仲睦ましい夫婦仲と書かれています。実は、この歌は自分の姉妹に代わって歌った代作なんです。
赤染衛門は、藤原道長の正妻である源倫子とその娘の中宮彰子に仕えました。この宮仕えの期間に、紫式部・和泉式部・清少納言・伊勢大輔等と親交がありました。
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