ありま山 ゐなの笹原 風吹けば
いでそよ人を 忘れやはする
★歌意
有馬山に近い猪名(いな)の笹原に風が吹くと、笹の葉が「そよ」と音をたてます。さあ、そのことですよ、(揺れて不安定なのはあなたの心で)私があなたのことを忘れましょうか。(いや決して忘れはしませんよ)
★解説
「有馬山」は、兵庫県神戸市有馬温泉地域にある山の総称です。有馬温泉は、日本三古湯の一つに数えられるほど、古来から親しまれてきました。
「猪名」も兵庫県に流れる猪名川付近の野のこと。
「いでそよ」は、「さあ、それですよ」の意味。
「人を忘れやはする」の「やは」は反語の意を表す係助詞。よって、「私があなたのことを忘れましょうか? いや忘れません」という意味になります。
★人物
大弐三位(藤原賢子)(だいにのさんみ、ふじわら の けんし、999年頃〜1082年頃)
『源氏物語』の作者として超メジャーな人物・紫式部(57番)と藤原宣孝の娘。母親の血を受け継ぎ、和歌・漢詩の才に長けていました。
母の後を継いで、一条院の女院・彰子に女房として宮仕えします。このとき複数の男性と交際したと言われていますから、容姿も淡麗だったと思われます。
その後、藤原兼隆と結婚し、一女をもうけますが後に離婚。1025年、親仁親王(後冷泉天皇)の誕生に伴い、その乳母に任ぜられます。
1037年までの間に、高階成章と再婚し、為家を生みます。1054年、後冷泉天皇の即位とともに成章は、正三位・大宰大弐に就任。そのことから、夫人の賢子は「大弐三位」と呼ばれるようになりました。
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