滝の音は たえて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞えけれ
★歌意
滝の水音が聞こえなくなってから長い年月が経ってしまっているけれども、その滝の名だけは世間に流れ伝わって、現在でもやはり聞こえていることだ。
★解説
歌の舞台は、京都市右京区嵯峨の大覚寺。ここには嵯峨天皇の離宮がありました。
天皇はその庭に人工的な滝を作って有名でしたが、大納言公任がこの歌を詠んだ頃にはすでに水は枯れて、滝跡だけが残っている状態でした。
その情景について、「滝の水音はもう聞こえないけども、その名声は今も聞こえている」と詠ったわけです。
後世、この歌によって「名古曽(なこそ)の滝」と呼ばれ、大沢池の北隅に滝跡の碑があります。
★人物
大納言公任(藤原公任)(ふじわら の きんとう、966年〜1041年)
祖父・実頼、父・頼忠ともに関白・太政大臣を務め、政治的にも芸術的にも名門の出。優れた学才により一条天皇の治世を支えました。和歌の他、漢詩、管弦にもすぐれ、「三舟の才」と称されたほど。
当時、全盛期にあった藤原道長には迎合していたものの、芸術面で名門の意地を見せていました。
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