物語は福建からスタート。林平之(りん へいし)は、運送業「福威鏢局」の跡取りでした。地域に大きな影響力を誇っていた「福威鏢局」でしたが、ある日、林平之を残したすべての家族、従業員が皆殺しにされます。実はこの事件、究極の奥義「辟邪剣譜」(へきじゃけんぷ)を狙った青城派による凶行でした。林平之は復讐を誓い、華山派に入門します。
で、かなり物語が進んでから、ようやく主人公の令狐冲(れいこ ちゅう、演:李亞鵬)が登場します。華山派の一番弟子、つまり林平之の兄弟子に当たります。おおらかな性格で、人望も厚い青年です。しかし、そのうち令狐冲も「辟邪剣譜」や武林統一を狙う勢力の陰謀に巻き込まれていきます。
令狐冲は好青年なのですが、物語の序盤から中盤にかけては悲惨な境遇のオンパレード。次々に襲い掛かかる敵は強敵ぞろいで、太刀打ちできません。加えて、あらぬ疑いをかけられて独房に入れられたり、恋仲だった岳霊珊(がく れいさん)は弟弟子の林平之とくっついたりと、読んでいて辛くなります。
そんな令狐冲でしたが、謎の女性・任盈盈(じん えいえい、演:許晴)との出会いで運命の歯車が動き出します。実は任盈盈は、武林の中でも華山派にとっては超敵対組織「日月神教」(にちげつしんきょう)の教主の娘でした。
この物語、陰謀が渦巻きすぎて、人によってはとっつきにくい可能性があります。それまで善人だと思っていた人物が極悪人だったり、悪人だと思っていた人物が仲間になったりと、読んでいる読者も混乱必至だからです。
しかし、それを補って余りあるのが、魅力的な登場人物たちです。不屈の精神で何度も立ち上がる主人公の令狐冲。とくに中盤以降は、「独孤九剣」(どくこきゅうけん)、「吸星大法」(きゅうせいたいほう)、「易筋経」(えききんきょう)といった反則級の奥義を次々に身に付け、無敵になります。そんな彼を支える恋人の任盈盈。
加えて表は善人、裏では極悪人の師匠・岳不群(がく ふぐん)。復讐のため、最強の奥義を身に付けるため去勢までしてしまう林平之。任盈盈の父で化け物じみた武功の持ち主・任我行(じん がこう)などなど、凄い連中が、これでもかと登場します。
極めつけが、「武功天下第一」の東方不敗(とうほう ふはい)。原作ではちょこっとしか登場しないのに、中華圏で圧倒的な知名度を誇る人物です。
東方不敗を有名にしたのは、『スウォーズマン/女神伝説の章』(1991年、原題:笑傲江湖之二 東方不敗、主演:ジェット・リー)で演じたブリジット・リン(林青霞)でした。原作では醜悪な老人という描写でしたが、ブリジット・リンが演じた東方不敗の美しさは人々の心をわし掴みにしました。これ以降、妖艶で中性的なイメージが東方不敗のデフォルトになったのです。
ちなみに、『機動武闘伝Gガンダム』(1994年〜95年)に「東方不敗マスター・アジア」という人物が登場しますが、これが元ネタになっています。
さて、「武功天下第一」と呼ばれるこの東方不敗、どれほど強いのでしょうか? 2001年CCTV版で解説してみます。
東方不敗は元々、日月神教のNo2でしたが、教主の任我行を幽閉して自分がNo1になります。令狐冲は、任我行の娘で恋人になった任盈盈、教団No3の実力者である向問天とともに任我行を救出することに成功します。そして、令狐冲、任盈盈、任我行、向問天という屈指の使い手4人がパーティーを組み、東方不敗に戦いを挑むのでした。
まさに『笑傲江湖』のクライマックスシーン。対決前の緊張感はサイコーです。そもそも任我行は、東方不敗にこそ敗れていますが、ラスボスクラスの強さを持っています。他3人も凄まじい武功を持つ実力者たちです。しかし、この4人が一斉にかかっても、東方不敗に一蹴されてしまいました。それほどまでに異次元の強さだったのです。結局、奇襲によってなんとか倒しますが、そうでもしなければとても叶わない無敵っぷりでした。
★関連記事
・武侠小説の巨人、金庸 ・中華明星一覧
・ブックレビュー一覧 ・映画・ドラマレビュー一覧 ・ゲームレビュー一覧
秘曲 笑傲江湖〈1〉殺戮の序曲 金庸武侠小説集 (徳間文庫) 新品価格 |
笑傲江湖(しょうごうこうこ)〈デジタル・リマスター版〉 [DVD] 中古価格 |
令狐冲もストUシリーズのキャラクターとして登場した!
新品価格 |