君がため 惜しからざりし 命さへ
長くもがなと 思ひけるかな
★歌意
あなたに逢うためには(どうなってもかまわないと)惜しくも思わなかった私の命までも、(逢うことのなかった今は)長く長くあってほしいなあと思うようになりましたよ。
★解説
「君がため」は、「あなたに逢って、深い仲になるためには」という意。
詞書には「女のもとより帰りてつかはしける」とあり、恋人に会った翌朝である後朝(きぬぎぬ)の歌です。
以前は別に長生きしたいとは思っていなかったのに、愛するあなたと深い仲になったら、いつまでも生きていたいと願うようになったよという歌です。
この歌をもらった女性はさぞかし嬉しいでしょうね。
★人物
藤原義孝(ふじわら の よしたか、954年〜974年)
太政大臣の謙徳公・藤原伊尹(45番)の三男。『大鏡』によれば、仏教への信仰心が篤く、出家の志があったそうです。また、かなりの美男子であったとか。当時流行した疱瘡にかかり、21歳の若さで死去してしまいます。
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