風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ
くだけてものを 思ふころかな
★歌意
あまりに風が激しいので、岩に打ち当たる波が打ち砕けるように、(しかも、あの人は岩のように冷淡で平気でいるのに)私一人だけが、さまざまに思い乱れて、恋の物思いに悩んでいるこの頃であることよ。
★解説
「いたみ」は形容詞「いたし」に接尾語の「み」が付いた形で、激しい様子を表します。
「おのれのみ」は、「私一人だけが」という意で、片思いに悩む男の切なさを歌っています。
冷淡な女性の感情を「岩」に例えています。おぉ、おっかない。
★人物
源重之(みなもと の しげゆき、生年不詳〜1000年頃)
清和天皇の曾孫にあたる清和源氏で、三十六歌仙の一人です。
相模権守、日向守など地方官を転々とし、最終官位は従五位下・筑前権守。官職には恵まれない人生でした。皇族の子孫でも臣籍降下した源氏や平氏の苦労が偲ばれます。
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