
由良のとを 渡る舟人 かぢを絶え
行方も知らぬ 恋のみちかな
★歌意
(潮の流れの速い)由良の瀬戸をこぎ渡っていく船乗りが、楫(櫓・櫂)を失って、行く先もわからずに漂うように、これから先、どうしてよいかわからない(頼りない)恋の行く末であることよ。
★解説
「由良のと」は、作者の任地だった丹後(京都府北部)の由良川が若狭湾に流れ込むあたりの地名。
「と」は「門」と書き、海峡のこと。
上の句では楫を失って不安な船乗りの状況を詠み、下の句では頼りなくて不安な恋の心情を詠んでいます。
★人物
曾禰好忠(そね の よしただ、生没年不詳)
時流に反抗して、和歌の新しい形式を模索した人物です。それは新奇な題材を用いつつも、『万葉集』の古語を用いるというものでした。
ただ、やはり変わり者だったらしく、歌壇では孤立していたようです。それでも、平安時代後期の革新歌人たちからは再評価されていました。最終官位は六位・丹後掾。
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