八重むぐら しげれる宿の さびしきに
人こそ見えね 秋は来にけり
★歌意
生い茂ったむぐらなどの雑草がはびこっている、この寂しい宿(住居)に、人は誰一人として訪れては来ないが、それでもさすがに秋だけは訪れてきたことだなぁ。
★解説
「八重むぐら」は幾重にも茂ったむぐら(茜科のつる草)のこと。
「人こそ見えね 秋は来にけり」の「こそ〜ね」は係り結びで、
ここでは「〜けれども」と訳します。
詞書には「河原院にて荒れたる宿に秋来るといふこころを人々よみ侍りけるに」とあります。
河原院とは河原左大臣・源融(14番)の住居のことです。この歌が詠まれた10世紀後半には「八重むぐら」が茂るほど荒れ果てていましたが、名跡をたずねて多くの歌人が訪れていたようです。
★人物
恵慶法師(えぎょう ほうし、生没年不詳)
詳しいことはほとんど伝わっていません。播磨国(兵庫県南西部)の国分寺の仏典講師を務めていたようです。
大中臣能宣(おおなかとみ の よしのぶ)・紀時文(き の ときぶみ)・清原元輔といった中級の公家歌人と交流していたと言われています。
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