
恋すてふ(ちょう) わが名はまだき 立ちにけり
人しれずこそ 思ひそめしか
★歌意
恋をしているという私の評判は、早くも立ってしまったことよ。
誰にも知られないように(あの人を)恋しはじめたばかりであったのに。
★解説
「名」は評判・うわさ。
「まだき」は副詞で、「まだその時期ではないのに、はやくも」の意です。
「人」は他人で、恋の相手ではありません。
自分の恋は誰にもわからないようにと心がけていたのに、
早くもばれてしまって困ったなぁという歌です。
★人物
壬生忠見(みぶ の ただみ、生没年不詳)
『古今和歌集』の選者の壬生忠岑(30番歌歌人)の子。三十六歌仙の一人。最終官位は正六位上・伊予掾。
960年、村上天皇によって「天徳内裏歌合」(てんとくだいり うたあわせ)が行われたとき、
平兼盛(40番歌歌人)と対決し、双方すばらしい歌と評されながらも僅差で負けました。
これがショックで病気になり、そのまま死去したともいわれています。
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