
わすらるる 身をば思わず 誓ひてし
人のいのちの 惜しくもあるかな
★歌意
あなたに忘れられる私自身のことは何とも思いません。
ただ、私への愛を神に誓ったあなたの命が(神の怒りにふれて、縮められはしないかと)惜しく思われますことですよ。
★解説
「人の命」の「人」は特定の人物のことで、ここでは恋の相手の男性のこと。
男性に捨てられた女性の心情を表現した歌です。
男性は女性との愛を神に誓っておきながら捨てて逃げてしまった。
もしかしたら神罰に触れて命を落としているかもしれない。
女性の恨みの表現とも取れますし、別れてもなお男性の安否を案じているとも取れます。
★人物
右近(うこん、生没年不詳)
右近衛少将藤原季縄(うこん の しょうしょう ふじわら の すえなわ)の娘。だから「右近」と呼ばれました。
醍醐天皇の中宮穏子に仕えた女房で、元良親王(20番歌歌人)、藤原敦忠(43番歌歌人)、藤原師輔、藤原朝忠(44番歌歌人)、源順(みなもと の したごう)などと恋愛関係がありました。
元良親王もとんでもないプレイボーイでしたが、お相手の右近も同等のプレイガールでしたか。
★関連記事
・百人一首一覧
・日本史 年代別記事一覧