
夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを
雲のいづこに 月宿るらむ
★歌意
夏の夜は短くて、まだ宵のうちと思っていたのに明けてしまったけれど、
(これでは月はとても西の山の端に行きつけまい。)
それではいったい雲のどのあたりに、月は宿るのであろうか。
★解説
「夏の夜」は陰暦の4〜6月の夜のこと。秋の夜長に比べて短夜です。
「宵」は夕方以後、暗くなってからしばらくの間のこと。月をテーマにした歌は多いのですが、たいていは秋に歌われます。それが今回は夏の短夜。夜になったと思う間もなく明け方になってしまって、これでは月も慌ただしいだろうという内容です。
★人物
清原 深養父(きよはら の ふかやぶ、生没年不詳)
『枕草子』で有名な清少納言(62番歌歌人)の父・清原元輔(42番歌歌人)の祖父です。
官位は従五位下・内蔵大允。
藤原兼輔(27番歌歌人)、紀貫之(35番歌歌人)、凡河内躬恒などの歌人と交流がありました。晩年は洛北・岩倉に補陀落寺(ふだらくじ)を建立し、隠棲したそうです。
★関連記事
・百人一首一覧
・日本史 年代別記事一覧