
ありあけの つれなく見えし 別れより
暁ばかり 憂きものはなし
★歌意
明け方の月が、夜明けに対して無関心で冷たく空に残っているように、
あの女性がいかにも無情に見えた(あの明け方の)別れのときから、
(私にとって)暁ほど辛いものはない。
★解説
「ありあけ(有明け)」は、夜明けの空に残っている月のことです。
「つれなく見えし」は、有明けの月の無情さと女性の無情さを掛けています。
「暁」は、東の空はまだ暗く、まもなく明るくなりそうな頃を指します。
「憂き」は、「憂し」の連体形で、つらい・せつないの意味です。
★人物
壬生忠岑(みぶ の ただみね、860年頃〜920年頃)
役人としては末席の六位で終わったとされており、低い官位の生涯でした。
それでも歌人としては一流で、905年に『古今和歌集』の撰者に任命されています。
こうした境遇は凡河内躬恒(29番歌歌人)とよく似ています。
勅撰和歌集全体で81首も収められ、三十六歌仙の一人に数えられています。
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