
心あてに 折らばや折らむ はつ霜の
置きまどはせる 白菊の花
★歌意
もし手折るというのならば、当て推量に折ってみようか。
初霜が一面におりて、(白菊なのか霜なのか)見分けがつかないように、
人目をまどわせている白菊の花を―。
★解説
「心あてに」は「当て推量に」という意味。初霜がおりて霜か白菊かわからないので、当て推量に折ってみようということです。
ただ、実際こんなことはないと思います。
雪に埋もれていれば別ですが、霜なら簡単に白菊と区別できるでしょう。
つまり、これは霜と菊の美しい「白の世界」を浮かび上がらせるための表現手段といえます。
★人物
凡河内躬恒(おおしこうち の みつね、859年頃〜925年頃)
役人としては、和泉権掾(いずみ の ごんのじょう)、淡路権掾などの地方官を歴任し、和泉大掾を最後に没します。
「掾」(じょう)という位は律令制四等官のうち三等官で、彼の最終官位は末席の六位。つまり、低い官位の生涯だったといえます。
しかし、歌人としての業績は目覚ましく、905年に紀貫之らと共に『古今和歌集』の撰者に任命されています。
古今和歌集には58首、勅撰和歌集全体で194首も収められるほどの実力者で、宮廷歌人としての名声は高かったようです。三十六歌仙の一人に数えられています。
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