このたびは ぬさもとりあへず 手向山
紅葉のにしき 神のまにまに
★歌意
今度の旅は(急なことで)お供えする幣(ぬさ)を用意することができませんでした。
(そこで、さしあたって)この手向山の美しい錦織のような紅葉をお供えしますので、神様の御心のままにお受け取りください。
★解説
「このたび」は、「この度」と「この旅」の掛詞。
幣(ぬさ)とは、写真のようなものでよく神主さんが持っているものです。古代では、旅行者が安全を祈るため道祖神に捧げました。
「手向山」は、どこかの山を指す固有名詞ではなくて、手向け(神にささげること)をしながら山越えすることを指します。
「神のまにまに」は、「神様の仰せの通り」という意味です。
★人物
菅家(菅原道真)(かんけ、すがわら の みちざね、845年〜903年)
「菅家」とは菅原道真に対する尊称です。今では「学問の神様」として、日本人のほとんどが一度は拝んでいる超メジャーな神様になっています。
幼少より詩歌の才があり、官僚としてドンドン出世していきます。宇多天皇(第59代)に重用されて、その治世を支えます。醍醐天皇(第60代)のときは右大臣にまで昇りました。
しかし、藤原氏との対立から大宰府へ左遷され現地で没します。彼の死後に天災が多発したことから、祟りを鎮めるため、太宰府天満宮を建立し天満天神として信仰の対象になりました。
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