有名な外国古典であり、夏休みの推薦図書によく登場する作品です。しかし、実際に読んだ人は少ないのではないでしょうか。やはり、タイトルに「孤独」とあるのが敬遠されやすい理由ですね。
スポーツを題材としながら、あまりスカッと爽やかっぽくない感じです。
そう、まさに本作は爽やかなものではありません。「生きる」ことを考えさせられる“文学作品”なのです。
主人公のスミスは、友人と二人でパン屋に忍び込み強盗を働いた罪で感化院に入れられています。そのスミスが感化院を代表してクロスカントリーの選手として走ることになります。
スミスは練習中や本番で走りながら、さまざまなことを考えます。
・大人は偽善だ
・こんな練習になんの意味がある
・院長は、賞をもらってほしいだけだろ
そんな社会への怒りが文章から沸々と沸いてくるようです。
私は高校のとき陸上部で中長距離を走っていました。中長距離の練習中って、やたらといろんなことが頭を駆け巡るのです。しかも多感な高校生の脳裏には、不安や憤りが渦巻くんですね。
私は本作をまさに高校時代に読んで、大いに主人公のスミスに共感したことを覚えています。
結局スミスは院長や大人たちの期待に反抗し、トップで独走していながら競技場に戻ってきたところでスピードを落とし、わざと後から来たランナーに追い抜かれます。そういった形で、彼は権威に対し必死で抵抗してみせるのです。
スミスは走ることが嫌いなわけではありません。走っているときは孤独ですが「この孤独感こそ世の中で唯一の誠実さであり現実であり、決して変わることのないという実感」であると考えているのです。
本作は短編ですから、すぐに読み終わることができます。いろいろと気付かせてくれる良作です。
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ラベル:スポーツ