月見れば ちぢにものこそ 悲しけれ
わが身一つの 秋にはあらねど
★歌意
月を眺めていると、あれこれと限りなく、ものごとが悲しく感じられることだ。
(何も)私一人のためにやってきた秋ではないけれども。(私一人だけに物思いさせる秋のようだ。)
★解説
当時盛んだった漢詩の影響もあり、平安時代の人々は秋という季節の美しさ・味わい深さを、「悲しさ」と結び付けて感動していたようです。その秋の代名詞的存在が「月」なのです。月について歌っているのは、百人一首ではなんと12首もあります。
さて、この歌には技巧も含まれています。「あれこれと」を意味する「ちぢに」は感じで書くと「千々に」です。それに対をなして、「一つの」を置いて強調しています。ちなみに、自分の名前にも「千」の字があるので、かなり数字を意識した技巧派といえます。
★人物
大江千里(おおえ の ちさと、生没年不詳)
阿保親王の孫である大江音人の子ですが、異説もあります。官位は正五位下・式部権大輔。正五位下という官位は序列10番目です。サラリーマンでいえば、ナポレオンのときとかぶるけど課長代理心得ぐらいかな。
894年、宇多天皇の勅命により『句題和歌』(大江千里集)を撰集します。これは『古今和歌集』の先駆となりました。
ちなみに、アラフォー世代以上には懐かしい歌手(今はジャズピアニスト)の大江千里さんは、この歌人とは一切関係ありません。同姓同名はまったくの偶然なのです。
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