今来むと 言ひしばかりに 長月の
有明の月を 待ちいでつるかな
★歌意
今すぐに行くよと(あなたから)連絡があったため、長月(陰暦9月)の
(秋の長い夜の)明け方の月が出てくるまで、待ち明かしてしまいましたよ。
★解説
作者は男性ですが、この作品は女性の立場から歌ったものです。当時は「通い婚」といって、男性が女性の家に通うのが習慣でした。
「今すぐに行くよ」という男からの連絡を素直に信じ切って、秋の夜の縁側近くでウキウキして待つ女性。しかし、待てども男は全然来ません。このときの心の不安とやるせない気持ちが、第4・第5句の「字余り」というイレギュラーによって表現されています。
★人物
素性法師(そせい ほうし、生年不詳〜910年?)
桓武天皇(第50代)の曾孫で、遍昭(良岑宗貞、12番歌歌人)の子。父の遍照と共に宮廷に近い僧侶として和歌の道で活躍しました。三十六歌仙の一人です。
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