
難波潟 みじかき葦の ふしの間も
あはでこの世を 過ぐしてよとや
★歌意
難波潟の、あの芦の、きわめて短い節と節の間のように、
そんな短い間でさえも、あなたにお逢いできずに、二人の仲のこの世を過ごしてしまえとおっしゃるのでしょうか。
★解説
「難波潟」は、かつて大阪湾の一部であった干潟で、芦の名所でした。そこの芦の節の間ということで、「短い時間」のことを比喩しています。
「世」は、「世の中」と「男女の仲」の両方の意味があります。「あなたに逢わずに過ごせというのですか」と男の冷たさを恨む内容になっています。
★人物
伊勢(いせ、872年頃〜938年頃)
900年前後の女流歌人。三十六歌仙のひとり。父・藤原継蔭が伊勢守だったので、「伊勢」と呼ばれていました。はじめ宇多天皇の中宮温子に女房として仕えました。
なお、かなりの男性に愛されています。わかっているだけで、藤原仲平・時平兄弟、平貞文。宇多天皇にも寵愛されて皇子を生んでいますが、その子は早世してしまいました。で、最後はその宇多天皇の皇子である敦慶親王と結婚して娘をもうけています。
宇多天皇に愛された後に、その皇子と結婚!? 現代の常識ではちょっと考えにくい状況ですが、かなりの容姿だったんでしょうかねぇ。
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