住の江の 岸に寄る波 よるさえや
夢の通い路 人目よくらむ
●歌意
住吉の海岸にうち寄せる波のように、夜、あの人に逢いに通って行く夢を見ようとしても、(人目のない夜なのに)その夢の中の恋の通い道で、私はどうして人目を避けているのだろうか(夢の中でも逢えない)。
●解説
「住の江」は、摂津国住吉(現在の大阪市住吉区)の海岸のこと。岸に打ち寄せる波の強さが表現されています。男は人目を避けて女性に逢いにいこうとしており、抑えようとしても抑えきれない波のような恋慕の強烈さが表れています。
ちなみにスミノエという地名には「住の江」の他に、「須美乃延」「須美乃江」「墨江」「墨之江」「住吉」など多数の漢字が当てられていました。平安時代に入ってから「住吉」はスミヨシと発音するようになり、スミノエとは別に「スミヨシ」という地名ができたと考えられています。
また、現在の大阪市には住吉区に加え、その西隣に住之江区(1974年に住吉区から分離)がありますが、ほとんどが埋立地です。
●人物
藤原敏行(ふじわら の としゆき、生年不詳〜907年または901年)
平安時代初期の歌人で三十六歌仙のひとり。小野道風が古今最高の書家として弘法大師・空海とともに敏行の名を挙げていますが、現存する書跡はわずか一点しか残っていません。
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