
立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる
まつとし聞かば 今帰り来む
★歌意
(ここで今、あなたと)別れて、因幡の国へ下って行ったとしても、その因幡の山の峰に生えている
松という名のように、(あなたが私を)「待っている」と聞いたなら、すぐに帰京するつもりです。
★解説
「いなばの山」は因幡国(鳥取県東部)の稲葉山のことで、「往なば」との掛詞です。行平が38歳のとき、昇進とともに因幡守に任じられ、任地へ赴く際の心境を詠んだ歌です。別れの相手は女性と限らず、当時は男性の友人に対してもこのような歌を歌いました。
「まつ」は「松」と「待つ」の掛詞です。
★人物
在原行平(ありわら の ゆきひら、818年〜893年)
平安時代前期の歌人。平城天皇(第51代)の第一皇子である阿保親王の次男で、在原業平(17番歌歌人)の兄。在原姓を賜与され、弟の業平とともに臣籍降下します。その後は、藤原氏以外の官吏としては比較的順調に出世し、前述のように38歳のときに因幡守として赴任します。
63歳のときに、学問所である大学別曹奨学院を創設します。64歳のときに中納言に昇進します。
★関連記事
・百人一首一覧
・日本史 年代別記事一覧
・鳥取県 記事一覧
![]() |
