2012年10月07日

百人一首12 僧正遍昭

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天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ
 をとめの姿 しばしとどめむ

★歌意
天を吹く風よ、(天女が通る)雲の中にある通路を吹き閉ざしておくれ。
(舞いが終わってもすぐには天上に帰れなくして)天女のように美しい舞姫の姿を、ここにもうしばらくとめておきたいと思うから。


★解説
「天つ風」の「つ」は古い格助詞で「の」と同じ、つまり「天の風」という意味になります。舞姫を天女に見立て、雲の中にある天上への通路を閉じてしまっておくれと呼びかけています。奇抜な表現であると同時に、舞姫たちの美しさを称えています。さて、そもそも舞姫たちとは何でしょうか?
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この歌には「五節の舞姫を見て詠める」という題が付いています。「五節の舞姫」とは宮中で毎年11月に行う「豊明節会(とよあかりのせちえ)」の際に舞う未婚の美女たちことです。






★人物
僧正遍昭(良岑 宗貞)(そうじょう へんじょう、よしみね の むねさだ、816年〜890年)
平安時代前期の僧・歌人で六歌仙のひとり。出家前は良岑宗貞という名で、桓武天皇(平氏の祖に当たる)の孫という高貴な生まれです。850年、寵遇を受けた仁明天皇の崩御により天台宗の僧として出家します。
円仁(実質的に最後の遣唐使として唐に留学した高僧)、円珍に師事し、その後、花山の元慶寺を建立します。885年には僧正(大僧正、権大僧正に次ぐ高位)にまで昇ります。
なお、子に素性法師(21番歌歌人)がいます。

高貴な生まれであるにもかかわらず、出家してそこでも高僧になったため人気が高く、様々な物語に登場します。江戸時代の歌舞伎舞踊で小町物のひとつ『積恋雪関扉』もそのひとつ。また、江戸時代の川柳では「遍昭は乙女になんの用がある」(えらい坊さんが、女に夢中とは何事か)とからかわれています。


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ラベル:仏教
posted by すぱあく at 07:07 | TrackBack(0) | 百人一首 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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