なかでも、初戦で優勝候補のスペインを破った男子サッカーのうち、永井謙佑選手の猛烈なスピードには世界中の目が釘付けになったといっても過言ではありません。事実、翌日のニュースはその話で持ち切りでした。
まるで、マンガのような速さで、現実にこういう選手が存在するんだなと単純に感動しました。
彼の走りを見ていると、『GIANT KILLING』(画:ツジトモ、原案:綱本将也、2007年〜)の椿 大介を思い出させます。
『GIANT KILLING』の主人公は、ETU(East Tokyo United)監督の達海 猛ですが、
選手側の主人公といえる存在が椿 大介です。
物語の序盤、彼はプロのトップチームに上がったばかりで、すべてのことに不安で自信が持てないでいました。
しかし、持ち前の足の速さがついに開花し、ETUになくてはならないほどの選手に成長していきます。彼の成長物語は、『GIANT KILLING』の魅力のひとつでもあり、大きな感動を与えてくれます。
合宿中の夜、ひとり練習に励む椿。
その姿を見て話しかける監督の達海。
椿の弱さが如実に現れるシーン。
変わりたいんス
嫌なんです
自分のことが昔から・・・
情けなくて・・・
自分で自分に腹が立って
悔しくて・・・
こんなんじゃ 駄目なの
わかってんスけど・・・
でも・・・
このとき達海は、彼らしいアドバイスをします。
「それでいいよお前」 「コンプレックス持ってる奴は強いぜ」
そして達海は、椿がかつて所属していた中学、高校、サテライトのコーチたちから、椿がどんな選手だったかを聞いていたことも告げました。
「お前を育てた人達は皆同じようなことを言ったよ」
「10回のうち9回はヘマをするが、
たった1回・・・輝かしいプレーですべての人を魅了する」
「お前に魅せられた人たちが・・・ここまでお前の背中を押したんだ」 「お前の実力だ 椿」
そのまま行け
何度でもしくじれ
その代わり
一回のプレーで
観客を酔わせろ
敵のド肝を抜け
お前ん中の
ジャイアント・キリングを
起こせ
そしてついに、椿が覚醒するときが
来ます
それはブラジル人トリオを擁する強敵、名古屋グランパレス戦でのこと。
ここで椿は、自分の身に起こった「変化」に気付きます。
これまで試合中は自分のことで精一杯で周りのことがまったく見えなかったのですが、
サポーターの応援、コーチたちの声、ピッチの隅々まで、「見える」ようになったのです。
目の前の世界が大きく広がった瞬間でした。
そして、猛スピードで敵陣のゴールに向かってドリブルする椿。
もう観客も、敵もド肝を抜かれています。
まさに永井選手もこれと同じでした。
その突進をくい止めようと、ブラジル人選手のカルロスが立ちはだかります。
あわやピンチかと、焦るETU陣営。
しかし達海は、椿のすべてを信頼していました。
行っちまえ
見せつけてやれ
お前の才能を
一流の選手はよく「試合を楽しみたい」と言います。
しかし、これは高みに上った人だけが味わえる境地だと思います。
まだまだ発展途上の人間は、辛くて長く、果ての見えない研鑽を積まなければなりません。
その長い道を乗り越えた人間こそ、「楽しめる」境地に辿り着くことができるのではないでしょうか。
椿 大介がようやくその一歩に辿り着いた瞬間でした。
オリンピックにまで辿り着くことができた選手たち。ぜひ試合を楽しんでもらいながら、いい結果を多く出してもらいたいと願っています。
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