中華圏(中国・香港・台湾)における知名度は、ほぼ100%。しかし、日本での知名度は5%ぐらいでしょうか。彼の作品は凄まじいほど面白いんです。日本語翻訳も出版されているんです。だいたいの図書館にはあります。彼の原作ドラマだってTSUTAYAに行けば、置いてあるんです。なのに・・・、なのに・・・、まだまだマイナーで残念です。
少しでも日本で金庸が知られるように、彼の全作品をご紹介します。ではまず、金庸作品の基礎知識から。
『ドラゴンボール』のような戦闘シーン
彼の小説は武侠小説(ぶきょう しょうせつ)というジャンルに入ります。日本ではまったく聞きなれないものですが、中華圏では確立されて長いジャンルです。読んで字の如く、武芸に優れ、義侠心に溢れたヒーローやヒロインが、中国の王朝時代を舞台に活躍する物語です。
時代小説は日本にもありますが、日本のものよりもチャンバラ活劇がド派手です。気によって体重を軽くする「軽功」を使い、高くジャンプしたり空を飛んだりします。さらには気を込めた一撃で、地面を爆発させたり、敵を吹っ飛ばしたり。要するに、通常ではあり得ないことばかりが起こるわけです。まぁ『ドラゴンボール』みたいなもんだと思えばわかりやすいでしょう。香港映画では、ワイヤーアクションを使って空を飛ぶ時代劇が多いですが、そのアイデアの大元はこの武侠小説なのです。
大河ドラマのようなスケール
物語のスケールが巨大で、まるで大河ドラマのよう。その巨大な世界観は『指輪物語』(『ロード・オブ・ザ・リング』)にも例えられ、「中国のトールキン」と呼ばれることもあります。
そう聞くと、読むのが大変そうと思うかもしれませんが、そんなことはありません。RPGと思えばいいんです。どの物語の主人公も始めはひ弱な少年なのですが、町を出て世界(江湖)を旅するうちに、強敵と出会ったり、師匠と出会って修業したり、頼もしい友人と出会ったりして、どんどん成長していきます。この流れにとても感情移入しやすいので、大変な思いをすることなく読み進めることができます。
宝塚歌劇のようなラブロマンス
中華圏でほぼ100%の知名度を誇っている金庸作品。男だけでなく、女性をも虜にするのはなぜか? それはラブロマンスがとても秀逸だからです。金庸作品に登場する女性は、ただ美しいだけではありません。武芸もピカ一で、機転も利きます。現代の女性も憧れる女性像がそこにあるのです。
そんな彼女たちですから、みんな自信満々でプライドが高いわけですよ。それが、不器用ながらも一途な主人公を好きになったりするわけです。だけど、プライドが高いから素直になれない。要するに、ツンデレってやつですね。そんなすったもんだを経て、最終的にはハッピーになる。まるで宝塚。宝塚歌劇団が金庸作品を舞台化してくれれば、日本でも爆発的に広まってくれるんだけどな〜。
日本以外のアジア全体で有名
なぜ、そんなに有名なのかと言えば、映画・ドラマ・マンガ・ゲームといった二次作品が半端じゃない数あるからです。俳優・女優が駆け出しの頃は、金庸作品のドラマに出ると一気にスターへの階段が開かれます。それほど、知名度を上げるのに効果があるのです。
中華圏(中国・香港・台湾)はもとより、華人・華僑が多く住むシンガポール、マレーシアといった東南アジアでも有名です。加えて、韓国でも80年代からブームになり、その着想は韓流時代劇にも取り入れられています。
要するに、アジアでは日本だけがマイナーだったのです。ただ、徳間書店が各国での人気ぶりに注目し、1996年から日本語翻訳を開始。少しずつ、知られるようになりました。それでも、まだまだマイナーですけどね。
中国史や歴史が好きなら人なら絶対にハマります。また、そうでない人でもきっとハマるでしょう。「こんな面白い作品があったのか!!」と驚くこと受けあいです。
発表年順 作品一覧
・書剣恩仇録(しょけんおんきゅうろく、1955年)
・碧血剣(へきけつけん、1956年)
・雪山飛狐(せつざんひこ、1957年)
・射G英雄伝(しゃちょうえいゆうでん、1957年)
・神G俠侶(しんちょうきょうりょ、1959年)
・飛狐外伝(ひこがいでん、1960年)
・倚天屠龍記(いてんとりゅうき、1961年)
・鴛鴦刀(えんおうとう、1961年)
・白馬は西風にいななく(1961年)
・連城訣(れんじょうけつ、1963年)
・天龍八部(てんりゅうはちぶ、1963年)
・侠客行(きょうかくこう、1965年)
・笑傲江湖(しょうごうこうこ、1967年)
・鹿鼎記(ろくていき、1969年)
・越女剣(えつじょけん、1970年)
★外部リンク
・徳間書店 金庸公式サイト
・金庸 - Wikipedia
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