
奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の
声聞くときぞ 秋はかなしき
★歌意
奥深い山の中で、散り積もったもみじ葉を踏み分けて鳴いている鹿の声を聞くときに、何にもまさって秋は悲しく感じられる。
★解説
読んでわかる通り、もみじが一面に散り積もっている情景が目に浮かびます。それはまさに華麗な紅葉の世界。歌に登場している鹿はオスで、妻を恋したい鳴いているという設定だそうです。秋は美しいけれども、一方では寂しさもあります。そして、鹿の鳴き声がその寂しさをいっそう際立たせています。

猿丸大夫(さるまるだゆう、生没年不明)
奈良時代の歌人で三十六歌仙の一人。伝説上の人物で実在したかどうか不明です。大夫とは五位以上の官位を得ている者や伊勢神宮の神職のうち五位の御禰宜、神社の御師、芸能をもって神事に奉仕する者の称です。
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