2012年03月12日

14世紀インドの物価高騰について言及 

今、欧州経済は危険水域にあり、日本も歴史的な円高で大きなダメージを受けていますが、経済というものはいつの世も変動があります。『大旅行記』では、14世紀のトゥグルク朝インドをおそった物価高騰について言及されています。

『大旅行記5』248頁〜
スルタンがマァバル地方に向けて出立され、首都を不在にされている間に、物価の高騰が起こり、事態は次第に深刻さを増した。穀物の価格は1マンが60ディルハムにまで達し、その後さらに高騰した。状況は窮迫し、ますます悲惨な状態になった。

そうしたときに、私は宰相との接見に出かけたが、その道すがらで3人の女が数ヶ月前に死んだ馬の皮を小さく刻んで、食べているのを目撃した。そうした皮を煮て、市場で売られていた。また一般の人々は牛を屠殺したとき、その血液を取って食べた。

<中略>

状況がさらに切迫したとき、スルタンはデリーの全住民のために6ヶ月分の食料を提供するように命ぜられた。そこで法官たち、書記たちと軍司令官たちは、路地や街区を回って、住民調査を行い、各人に1日当たりの食料――マグリブ地方のラトル単位で1.5ラトルに相当する――6ヶ月分与えた。

その期間を通じて、私は、スルタン、クトブ・ウッディーンの墓廟に供えるために準備していた食料を人々に提供したので、多くの人々の命がそれによって救われた。

●解説
物価高によって食料が買えなくなり、飢えに苦しむ民衆の姿が伝わってきます。そこでスルタンは、「デリーの全住民のために6ヶ月分の食料を提供」する政策を実施します。これは政府による景気対策の原型といえます


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posted by すぱあく at 04:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 『大旅行記』レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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