『大旅行記5』321頁〜
宮殿に入って見てみると、スルタンは高殿の上で、玉座に背をもたせかけておられた。一方、カブーラ大王はその前に侍立していた。私がカブーラ大王に挨拶すると、大王は「拝礼せよ! 世界のご主人様は、そなたを王国の都デリーにおける法官に任命あそばされた。そなたの棒給は年間1万2000ディーナールとされ、領地も割り当てられた」と言った。
<中略>
スルタンは「デリーの法官職はとても重要な任務だ」と私に言われたが、私は「ありがたいお言葉ですが、私はスンニ派のマーリク派法学を学んでいますが、この国はハナフィー派です。しかも、ペルシア語もわかりません」と話した。
すると、スルタンは「安心せい。わしは、すでにバハーゥ・ウッディーン・アルムルターニーとカマール・ウッディーン・アルビジュヌーリーを汝の補佐官に任命している。二人がそなたにいろいろと助言を求めて来ることじゃろう。しかるに、そなたとしては法廷議事録を記録すればよいのじゃよ。そなたはわれらにとれても子息も同然じゃからな」と言われた。
●解説
社長(スルタン)がイブン・バットゥータを法官職に任命し、給料(年間1万2000ディーナール)まで詳細に決めていました。しかし、イブン・バットゥータは一回、固辞します。
「いや、無理ですって、私はペルシア語が話せませんし・・・」
すると社長(スルタン)は「大丈夫。有能な同僚を二人も付けるから」といい、結局インドという旅先の王宮で法官職としての就職が決定し、この後8年間もを務めることになります。
なんという逞しさでしょうか。ちょっと信じがたいです。彼なら、間違って当時の日本に漂着しても室町幕府でシッカリ働いていたような気もします。
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ラベル:イスラム教