『大旅行記5』313頁〜
私がスルタンに近付くと、やがてスルタンは私の手を取って握手し、その手を握ったまま放さずに、この上なき丁重なお言葉で呼びかけはじめ、ペルシャ語で「汝の来朝は、慶賀に堪えぬことだ。さてもさても、よくぞ来られた。まずはくつろがれるがよい。わしは、汝に何かと温情をかけて進ぜようぞ。汝の郷国の者たちが噂を伝え聞き、汝のもとに集まり来るほどの手厚い授け物も進ぜようぞ」と私に申された。
それに続いてスルタンは、私の国はどこかと尋ねられたので、「マグリブ地方でございます」と返答すると、御方は「では、アブド・アルムゥミンの御国か?」と聞かれた。そこでは私は「さようでございます」と言った。
スルタンからの厚い言葉を賜るたびに、私は御方の手に口付けし、それが7回にも及んだ。やがてスルタンから記念の礼服を賜った後、私は退席した。
●解説
下線部の部分、何気に凄いので注目してください。
スルタンは「では、アブド・アルムゥミンの御国か?」と聞きます。
このアブド・アルムゥミンとは、ムワッヒド朝(1130年-1269年)を建国した初代カリフのアブド・アルムゥミン(wikipedia)のこと。

14世紀当時に、インドのスルタンが北アフリカの情報を知っていたことに驚きです。キャラバン商隊などから情報を得るなどして、色々と知っていたんでしょうね。
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ラベル:イスラム教